第12話ラナside3
「先生、私達は既に婚姻しています。このままカイト様と初夜を迎えますわ」
「ラナちゃん、いいのかい?こんな状態で。カイトは君を乱暴に扱うかもしれないんだよ?」
「お義父様、大丈夫です。カイト様を治すためですもの。それに娼館の方に任せてしまえばきっと私はカイト様も私自身も許せなくなると思うのです。こんなになるまで王女殿下を拒否してくれたのです。私もカイト様を支えたい」
その言葉に父もローゼフ子爵も何も言わなかった。何も言えなかったのかもしれない。暫く重い空気が流れた所で医務官が告げる。
「……ラナ様、ラナ様の覚悟は分かりました。子爵様方、宜しいですか?」
「あぁ。仕方がない」
「ラナちゃん、すまない」
「ではラナ様にお話がありますのでお二人は別室で待つかお帰りいただけますか?」
「そ、そうだな。すまない。ラナ、私達は一足先に家に帰る」
「……わかりました。お父様。有難うございます」
私は頭を下げると父達は部屋を出て行った。残された医務官と私とカイト様。
「ラナ様、これからカイト様の縄を解きます。その前に侍女を呼び、湯浴みを。いくら患者の治療とはいえ、初夜は大切なものですから。湯浴み後にまた説明しますね」
「はい。先生」
医務官はそう言うと部屋を出た。入れ替わるように侍女がやってきてすぐに湯浴みの準備に取り掛かってくれたわ。
どうやら侍女は王妃様付きの侍女で王妃様から直接指示を受けて来たらしい。私は侍女に頭の先から足の先まで洗われて今まで使ったことがないような化粧品やらマッサージまで受けた。
しっとりツヤツヤで感動してしまったわ。待たせているカイト様の状態を考えると申し訳ないのだけれど。
そうして準備も終わり、また侍女が部屋を出ると医務官が部屋へ入ってきた。
「ラナ様、どうぞこの小瓶をお飲みください」
「先生これは?」
「これは痛みを緩和させるための物ですから飲んだ方が良いと思います。あと、潤滑油を置いておきますのでお使い下さい」
私は医務官に指示された通り小瓶を一気に飲み干す。効果が出るまで少し時間が掛かるのだろう、医務官は話を始めた。
「ラナ様、王妃様からの伝言がございます。『今回の件で迷惑を掛けたわ。グレイスは既に隣国へ送りつけた。カイト・ローゼフ子爵子息を拉致し、娘に宛がおうとした陛下の退位も決まった。
もう貴方達を引き裂く者はいないから安心して欲しい。謝罪や慰謝料は後ほど子爵にします。このような形で婚姻と初夜を迎えさせる事になってごめんなさい』という事です」
そうか、やはり私達の事は筒抜けよね。王妃様にまで私達の事が知られていると思うと羞恥心で一杯になる。泣きたい。
「ではカイト様の縄を解きます。後はゆっくり彼に身体を預けるようにお願いします。治療ですから。気に病まずに」
「はい。皆様にとても良くしてもらって感謝しかありません。王妃様にも感謝していたとお伝え下さい」
私は医務官へお礼をいう。そうして医務官はカイト様の縄を解き部屋を後にした。
残された私はカイト様を覗き込む。
「……ラナ、ラナ」
夢うつつで私を呼んでいる。
「カイト様、私は此処にいるわ」
そうしてベッドへ入った。
……
……どれくらい時間が経ったのか分からない。
気づけば既に日が高かった。
逞しい腕が私に絡んで離してくれそうにない。恥ずかしいけれど彼の胸板にそっと顔を埋める。
「ラナ?」
「カイト様?」
私はカイト様の顔を見ようと顔を上げると、カイト様は泣きそうになっている。
「あぁ、ラナ!本当にラナなのかな。俺が抱いていたのは夢じゃないよな」
そう言いながらギュウギュウと私を抱きしめてくる。
「く、苦しいですわっ。夢ではありません」
「ずっと君とこうしたかった。もう一生離さない。すぐにでも結婚しよう」
「ふふっ。嬉しいです。でも、一つだけ間違っていますよ。旦那様、私達は既に結婚しております。不束な嫁ですが宜しくお願いしますね」
その言葉を聞いたカイト様の腕はまた私をギュッと抱きしめていた。色々な事が短期間で起こったけれど、皆に祝福され、幸せを掴むことができて本当に良かった。
【完】
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最後までお読みいただきありがとうございました⭐︎
この後、グレイス王女の話が1話残っておりますが、【やや閲覧注意】部分も有りますので大丈夫な方のみお願いします。(´∀`)
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