第7話
「魔力切れです」
神官長は淡々とそう告げた。
「魔力切れだと!? 5人全員がか!? 一体どういうことだ!?」
フリードリヒが気色ばむ。すると神官長は蔑んだ目で見下ろしながら、
「王太子殿下、私言いましたよね? 聖女アンジュは歴代の聖女に比べても魔力がズバ抜けて高いと。そんな聖女を追放するなんて以ての他だと。ご覧なさい、この有り様を。5人掛かりでもアンジュ一人の力に敵わないんですよ?」
「そ、そんなバカな...」
確かに神官長はアンジュを追放することに反対していた。それを強行したのはフリードリヒの独断だ。全ての責任はフリードリヒにある。
だがそれにしたってだ、アンジュが居なくなってまだ一週間だぞ? そんな短い期間の間にこんな体たらくを晒すようじゃ今後が思いやられる。フリードリヒは頭を抱えた。
「王太子殿下、悪いことは言いません。今からでもアンジュに頭を下げ戻って来てくれるようにお願いするべきです。このままじゃ大変なことになりますよ?」
「そんなこと無理だ...アンジュの居場所さえ分からない...」
後で退職金の送付先を連絡すると言っていたアンジュからまだ連絡は来ていない。だから二人が今どこに居るか分からないのだ。
「それにアンジュが居なくなってまだほんの一週間しか経ってないんだぞ...どの面下げて戻って来てくれなんて言えるんだ...」
あれだけ大見得切ってアンジュを追い出しておいて、一体どの口がそんなこと言えると言うのか。とてもじゃないが、王族としてのフリードリヒのプライドが許さなかった。
「そんなことを気にしてる場合じゃないと思いますが...それじゃあ一体どうする気なんです?」
神官長は呆れたような口調でそう言った。フリードリヒはしばし黙考した後、苦し紛れにこう言った。
「この5人を選抜する時に、外れた他の候補の女共が居ただろう? そいつらを全員集めてなんとか結界を維持するんだ。当面は人海戦術で乗り切る」
「分かりましたが、そんなもん一時凌ぎにしかなりませんよ?」
神官長の言う通りだ。選ばれた5人よりも劣る者達をいくら集めても、根本的な解決になりはしない。
「分かってる! その間に次善の策を考える!」
フリードリヒは自身に言い聞かせるようにそう叫んだ。次善の策などありはしないことを良く分かった上で。そもそもそんなもんがあったらとっくにやっているだろう。
「フゥ...分かりました...」
神官長は長いため息を一つ吐いた後、諦観したような表情を浮かべてそう言った。
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