第5話
「独立?」
「えぇ、そうです。お頭は公爵領の領民達にも人気があるし、公爵領をそのまま新しい国として独立するって言っても、きっとみんな受け入れてくれると思いますぜ?」
「そうかも知れんが...無理だよ...とてもじゃないが俺は国王なんてガラじゃないって...しがない一貴族なんだぞ?」
「いやいや、なに言っちゃってんですか? お頭は公爵閣下ですよね? この国じゃ王族に次ぐ地位じゃないですか?」
「いやそりゃあ、歴史と格式のある公爵家なら胸張って堂々と名乗れるだろうが、ウチは武勲を立てて成り上がったばかりのなんちゃって公爵家なんだぞ?」
「なんちゃってって...」
「いや実際そうなんだって。本来ならせいぜい伯爵止まりの家格のはずが、あれよあれよという間に成り上がっちまったんだ。いやぁ、ホント戦争って怖いよなぁ」
アストンは噛み締めるようにしみじみとそう言った。
「それでも公爵は公爵なんだから、独立してお頭が国王になったって問題ないですって」
「いやでもなぁ...」
中々煮え切らないアストンに業を煮やしたのか、
「あら、いいんじゃない。お父様、独立しちゃえば? 国王になっちゃえば?」
とアイリスはまるで他人事みたいな口調でそう言った。
「お前なぁ...他人事みたいに言ってるが、俺が国王になるってことはお前お姫様になるんだぞ? そこんとこちゃんと分かって言ってんのか? お前にお姫様が務まるのか?」
「まぁなんとかなるんじゃない? それにお姫様って言ったって、どうせ私はその内どっかに嫁に行くんだろうから、そんなに長い間お姫様しなくていいんじゃない? だったらあんまり神経質になる必要はないかなって思って」
「お前はどこにも嫁に出さん! そもそもあのクズ王子の元にだって嫁がせたくなかったんだからな! もしまた変なヤツの所に嫁がせて、もう一度お前を不幸にしようもんなら、あの世に行った時、メリッサに顔向けできんからな!」
「うわぁ...親バカ発言来たよ...」
メリッサとはアイリスの母親のことである。元々体の弱かったメリッサは、アイリスを出産した後すぐに儚くなってしまった。
だからアストンは娘を溺愛している。亡き妻をこよなく愛していたアストンは、その妻が命を懸けて遺した一人娘をそれはそれは大事に育てて来た。
周囲から何度も再婚を薦められたが、アイリスのためを思って全て断って来た。時が経つに連れ、アイリスはメリッサにそっくりの美しい娘に成長した。
これで溺愛しない方がおかしい。
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