第2話 初めましてだいだら様 Scene2

『だから、ごめんてー。』

朝の一件で、だいだらの機嫌を損ねた俺は現在謝罪中だった。


「そもそも、とおるはのぉ。神たるワシへの尊敬の念が足らんのじゃ。小さき頃はあーんなに、だいだら様だいだら様と付いて廻って来とったのに。最近のとおると来たら、やれ宿題がーだの、やれ見たい配信がーだのゴニョゴニョガミガミ・・・」



うわぁ。止まんねぇ。小姑かよー。

『でも、尊敬しろって言われてもなぁ・・・』


「なんじゃっ。良く思い出してみぃ。ワシが何度お前のピンチを救ってやったことか!」


『ピンチ?んーーー。まぁあったような無かったようなー。』少し思い出してみるか。


回想する。


回想①

「なんじゃ。とおるよ、困っておるのか?」

『ん。あぁ、なんかスマホのWi-Fiが繋がら無くなっちゃってさ。』

『この扇のマークはついてるんだけど』

「どれ。ちとスマホを見せてみい。なるほど、ルーターから電波が来とるのに繋がらないとなると、モデムの方へ見てみい。」

『あっ。ホントだ。モデムのコンセント抜けた。ありがとう。だいだら』

「まっ。灯台下暗しというヤツかの。フッフフー♪」


回想②

「なんじゃ。とおるよ、そんな頭を悩ませて」

『ん。あぁ、学校の授業でノートパソコンが必要で買いたいんだけど何を基準に買えば良いか分かんなくてさ』

「なんじゃそんなことか。予算はいくらじゃ?」

『できれば、5万くらいで。あと趣味で動画編集とかにも使いたいかも。』

「かぁーーー。こりゃまた欲張りさんじゃのぉ」

「こういうのは、出来合いのモノを買うのでは無くパーツをバラで買った方が安く高性能にできるんじゃぞ。まぁワシにまかせておけ。ハードディスクはSSDが良いかのゴニョゴニョ・・・・」

『へぇ。そういうものなんだぁー。』

「それが普通じゃよ。1つ物知りになったのぉ。ハハハー♪」


回想③

「なんじゃ。とおるよ、また困っておるのか?」

『ん。あぁ、昔誕生日にもらった光るオルゴールのライトが点かなくってさぁ。小さい頃の思い出の品なんだけどさすがに寿命かな』

「なんじゃそんなことか。ちと見せてみい。このオルゴールの蓋をちょちょいと空けてとっ。」

「ほれ見てみい。基盤のハンダが取れておるだけじゃよ。ちょっと待っておれ。」

「ここをー。こうやってと。ほれハンダし直したぞ。スイッチ入れてみい。」

ピカッ。

『おおぉ、ついた。ありがとうだいだら。』

「まぁ。このくらい普通じゃよ。リユース、リドュース、リサイクルじゃ。フハハハーー♪」


回想④

「なんじゃ。とおるよ、また困って、、、」



『チガう。なんかチガう!なんかソレじゃない!!』

『あと、なんか最後の笑い方が今思うとムカつくし!』



「ど、どうしたんじゃ、とおる?!」

だいだらは、ワナワナしながら心配そうに俺を見てくる。

『いや、たしかにいろいろとピンチはピンチだったよ!でも、なんか、もっと神様っぽいヤツないのかよっ。神通力で事故や厄災を防いだとかさぁ!』


「神通力なぞ、そんな軽々しく使えるか!」


『なんつーかな。親戚のおじさんに意外な特技があったレベルなんだよなー。』


「お、おじ、オジサンってなんじゃ!こんな可愛げな少女に向かって!」

「あーーでも、こんなこともあったのぉ」

だいだらは仕返しするような薄ら笑みを浮かべ。

「おぬしの部屋を母君が掃除しておった時のぉ、ベッドの下からおぬしが心底大切に、親の形見の様に大切しておった大人の薄い本を掃除機が吸い出した事があってのぉ。その時、ショックを受けた母君を誰が諭し慰めてやったか。」


『え。ちょっと待て。なに、おれ知らない話しなんだけど・・・・・』


「しかも、学園モノとはお主・・・これだから童貞思考は。はぁ。」

お手上げのポーズで、左右に首を振り小さくため息をつくだいだら。


『そもそも。だいだら、何勝手に人の部屋に入ってんだよ。このロリばばぁ!』


「なっ!誰がロリばばぁじゃ!とおるのバカたれ、あんぽんたん!おたんこなす!」


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