第47話
「これは?」
翌日、今日も今日とて町の中を探索していたわけだけれど、中心部に近いところは比較的大きな建物が建っていて、その中に1つ気になる建物を見つけた。
他の建物よりも明らかに頑丈に出来たその建物、入り口もさびてしまってはいるものの、頑丈な鉄によってしっかりとした作りにされていたのだろうと言うことが推測できる。何かがあっても中が守れるようにだろう。屋根はしっかりと石で出来ていて、外見は多少崩れてはいるものの、原形を保っている。
明らかに何か重要な物が中にあると言うことが分かる。
早速その中に入ってみることにした。
「えぇ?」
中に入ってみて、明らかに建物の外と空気が違うことに気がついた。まず湿度が低い。温度自体は外とあまり変わらない。今まで通り低いのだが、明らかに湿度が違うのだ。からっとしている。
きっと魔道具がまだ動いているのだろう。
そして、あんなに外の地面や崩れた家なんかはびちゃびちゃになっているのに、地面はしっかりと乾いていて、中は水気を感じない。
中は窓から入る光だけで、まだ様子があまり分からない。ただ棚のような物があるのは分かる。
私の明かりは洞窟内を明るく照らしていたが、その範囲がこの建物内にまでは及んでいなかったらしい。なのでこの建物内を照らしていく。
ふわっと暗かった視界が明るくなった。そこにあったのは先ほどから僅かに見えていた棚だった。
棚が所狭しと敷き詰められている。手前には木製の机や椅子がある。乾燥していて、建物自体が頑丈なためか、そのものはまだ原形をとどめている。
室内は蜘蛛の巣こそ張ってはいるものの、他の建物に比べればきれいだ。
よくあるドラキュラが住む洋館みたいな? そんな感じな見た目をしていた。
棚の中には何が入っているのだろう。少し歩いてよく見てみる。
そこにあったのは大量の本だった。
「なるほど。ここは図書館なのか」
道理で厳重に守られていたわけだ。もしもこの文明が滅んだ後も、そのことについて記していた書物が残っていればこの文明は語り継がれる。当時生きていた人はそういうことを知っていたのだろう。
相当高度な文明。この文明が何年前まであったものかは分からない。ただ明らかなのは、現在地上に広がる文明と同等か、それ以上のレベルであったと言うこと。
きっと面白い書物が眠っているのだろう。私としてもこれまでここを探索してみて個人的に興味が湧いた。
この文明について細かく記載されている物もあるはずだ。しばらくここの書類を漁ってみることにする。食料品は十分ある。面白い本があればアイテムボックスに入れて持ち出してしまおう。
もうこの場所は私の場所だ。入り口にあったあの小さな洞窟に、私の所有地とでも書いておこう。この洞窟は私の物だから漁っても問題はない!
とか言う暴論を頭の中で高速で編み出し、早速漁り始めた。
あれからしばらくの時が経った。おなかがすいたらご飯を食べ、眠くなったら寝る生活をしていたので、何日経ったかは分からない。
数が多すぎてすべては読めないのだが、いくつか本を読んでみた。
この建物はどうやら2階建てで、様々な物がある。論文や小説、図鑑なんて言う物もあって非常にバリエーションに富んでいた。私のアイテムボックスがどれほど入るか分からないが、正直ここにある本はすべて持って行きたい。
まあワープでいつでもここに来られるので大丈夫だが。
ここまである程度中を探索してみたのだが、どうやら重要文献はこの場所にはないらしい。どこかに一般公開禁止エリアのような物があるのだろうと推測する。
実はバックヤードのような所はまだ入っていない。きっとそこにあるのだろう。
とりあえずそういう面白いところに行く前に、まずは誰でも見られる様なエリアを見てみようと思ったのだ。
この世界娯楽がない。なぜなら娯楽を楽しむほどの余裕がある人が少ないからだ。どこかの儲かっている貴族なんかは余裕があるだろうが、その娯楽は平民まで浸透しない。
なぜなら娯楽で遊んでいる余裕がないから。場所によってはその日食べるだけで精一杯なのに、遊んでいられる余裕などあるわけがない。
だから長らく娯楽と言えば旅くらいだったわけ。
ただここは違う。娯楽に満ちあふれている。
いろいろあるよこの場所には。ファンタジー小説もあるし、推理系もある。推理系は正直面白くはなかった。推理はある程度文明が発達して、いろいろな便利グッズが出てきてからが面白いんだろうなって言う感じ。
図鑑も興味深い物があった。魔物の特性を書いている物があって、これはすぐにアイテムボックスへと放り込んだ。これからは私と一緒に旅をしようではないか。
あとは野草辞典とか、そういう物もね。
旅に役に立ちそうな物をいくつかアイテムボックスへとしまっている。
あと探していた魔導書だけれど、それは見つからなかった。
いや、あったにはあったのだけれど、本当に初級の物だけ。家庭用の魔法の紹介をされたところで、私はもうそれは使える。
だって200年も牢屋に閉じ込められていたんだよ? 私が本書いた方がわかりやすいんじゃないかなって思ったよ。
きっと、ちゃんとした魔導書は重要文献を保存しているところにあるはずだ。
「よし、入ってみるか」
バックヤードは鍵が掛かっていた。なので扉を破壊させて貰った。
さっそくバックヤードを探索してみることにする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます