過去の想い人と恥ずかしい言葉と制裁と
あれから司は時間を決め部屋にこもり依頼書に書かれている物を創る。
一つ一つを考えながら創っているため時間がかかっていた。休みながら創っても、かなり疲れるようである。時折、ハァハァと息を切らし頭を抱えていた。
それらが三日間つづき――……その間、美咲はあいた時間で小説を書き続けている。
泪は籠の中から美咲の様子や頭の中に流れ込む映像をみていた。
(う、うん……ガルディスさんがどういう人なのかよく分かった。可哀そうだから、もうみたくないよ)
何が可哀そうなのか。ガルディスはプライベート時間に女性を口説こうとして断られ続けている。現在、十名の女性にだ。
昔は、もっとモテていたようだが。一人の女性と付き合っていて結婚も決まっていた。それさえも、すっぽかすほどに女性が好きだったため破談になっている。
そんなこんなで恐らく婚期を逃したのだろうな。
(ラギルノさんは真面目だなぁ。女性に興味ないの? 休憩中に結構、女性に話しかけられてるけど。
んー、どっちかといえば女性がラギルノさんを口説いてるよね?
それに暇さえあれば瞑想をしたり本を読んでる。それだけじゃない。体を鍛えたりしてた。宿舎では斧の手入れやランニングもしてたし。
そういえば……ガルディスさんも宿舎では剣の稽古や色々やってた。そうか……ガルディスさんは頑張っている姿を人にみせるタイプじゃないんだね。
それと対してラギルノさんは人の目を気にしない。そのせいもあるの?
性格の違い……んー仲が悪いのは、それだけじゃないね。過去で色々遭ったみたいだし)
そう納得し泪は美咲へ視線を向けた。
(そういえば美咲さんの好きだった人も、この世界に来ていたんだよね? どんな人なんだろう。
美咲さんが好きになるような人だからカッコよくて素敵な人なんだろうなぁ)
確かにカッコいいかもしれない。でも……見た目だけなので逢うのはやめておいた方が無難だ。外面はいい。だが本性は最低なので……(汗)
片や美咲は机に向かい昔のことを考えている。
(そういえば
まあ生きてるとは思うけど、あの能力だから大丈夫だね。それに心配しても仕方ないし)
流石に過去を引きずっていないようだ。この世界で
そうこう考えながら紙と睨めっこをしていた。すると扉をノックする音が聞こえてくる。その後、司の声が聞こえてきた。
それに気づき美咲は立ち上がり扉の方へ向かう。
美咲は喜び扉をあけた。すると司は依頼された物が完成したことを美咲に告げる。
それを聞き美咲は「良かったね……お疲れ様」と言い、ニコッと笑った。
その後、二人はラギルノとガルディスが何時もの時間にくるのを居間で待つことにする。
▼△★△▼☆▼
……――数時間後。客間の一室では司と美咲の真向かいに、ラギルノとガルディスがソファに座りお菓子を食べお茶を飲んでいた。
そう昨日から、ラギルノとガルディスは何時も同じ時間ぐらいに美咲と司の屋敷に来ている。
「完成品は渡した。それなのに、なんでのんびりしている?」
「ツカサ……来たばかりだ。少しぐらいゆっくりさせてくれたっていいのではないのか?」
「ガルディスの言う通りだ。次、何時こんな美味しいお菓子に……お茶が飲めるか分からん」
そう言われ美咲は、ニコニコしていた。そう、美味しいと言われ嬉しかったのである。
一方の司はその言葉を聞き不貞腐れていた。
「じゃあ、それ食べたら帰れよな!」
「ああ……帰る。だが、なんでそんなに追い返したい?」
ジト目でガルディスは司をみる。
「……なんだよ、その眼は? 俺は只、疲れたから寝たいんだ」
「本当にそれだけか?」
「ガルディス、それ以上は詮索するな。恐らく忙しかったから早くベッドで――……ピー……――したいんだろう。まあ恋人同士なら当たり前のことだ」
サラッと清々しい顔でラギルノの口から信じられない言葉が発せられる。
それと同時にラギルノの頭上に魔法陣が展開され鉄板が現れた。
気配に気づいたラギルノは咄嗟にガルディスを掴んだ。
捕まれたガルディスはラギルノが何をしようとしているのか分かり必死に抵抗する。
そんなことをしていれば間に合う訳もなく……ドサッとラギルノとガルディスへと鉄板が落下した。
無残にも二人は鉄板の下敷きになり伸びている。巻き込まれたガルディスは哀れとしか言えない。
その後、司と美咲は二人の上から鉄板を退けて床に寝かせると傷の手当てをした。
この時、泪は既に籠の中で真っ赤になり倒れている。
そして二人はラギルノとガルディスの回復を待ちながらお茶を飲んでいたのだった。
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