冷たいシャワー

 ここは司と美咲の屋敷。


 あれから建物の中へ入った美咲は自分の部屋に向かった。そして部屋に入るなり机の上に泪が入った籠と依頼書と司に創ってもらった紙を置いたあと椅子に座る。


 その後、束の紙の中から一枚とると自分の目の前に置き近くにあるペンを持った。


「さて……何を書こう」


 そう言い美咲は思考を巡らせる。


 その様子を泪は籠の中からみていた。


(真剣に悩んでるなぁ。どんな物語が完成するんだろう……楽しみ。ん? これが完成したのなら、どこかに残ってるのかも)


 そう思い泪は美咲に視線を向ける。


 美咲はペンを指で回しながら考えていた。


(そうだなぁ……子供向けなら冒険ものがいいかも。でも、この世界の子供って……そう云うの日常茶飯事なんじゃ。そうなると……)


 あれやこれや悩み過ぎて美咲は頭が痛くなってくる。


「すぐには書けそうにないなぁ。どうしよう……んー、少し気分転換した方がいいか」


 そう言いながら美咲は泪をみた。


「ルイは白い小鳥だったね。そういえば……体の色がくろずんでる?」


 美咲はそう言い泪のそばへ顔を近づける。


「臭うかも……洗った方がいいね。よく考えたら、ずっと水浴びさせてなかった」


 そう言い美咲は立ち上がり泪が入っている籠を持った。その後、シャワー室へと向かう。


(そういえば…………クチャい……)


 そう思い一滴の汗が泪の顔を伝い流れ落ちる。



 ▼△★△▼☆▼△



 ここは脱衣室。美咲は泪の籠を低い棚の上に置いた。


「んー、私もシャワー浴びようかな」


 そう言い美咲は服を脱ぎ始める。


(……!? 美咲さんの背中に傷がある。そんなには大きくないけど……ここまでに色々あったんだろうなぁ)


 そう思い泪は美咲をみつめていた。


「さて……ルイ、入るよ」


 そう言い美咲は籠を持ちシャワー室へと向かう。


 シャワー室に入ると美咲は泪を籠から出した。


「逃げないでね」


 それを聞き泪は緊張しながら、その場に待機する。


(なんか、ドキドキしてきた……大丈夫だよね?)


 そう思い泪は不安になってくる。


 栓を開けると、シャアーっと勢いよく水が出た。


「冷たいっ! 相変わらず、お湯が出ないかぁ。司に言ってはあるけど……まだお風呂を創ってくれないのよね。まあ……その内かなぁ」


 そう言いながらシャワーの水を弱めに調整する。その後、シャワーの水を泪にかけた。


「ピイィィー!? (冷たいっ!?)……」


 余りにも冷たかったため泪は暴れる。


(これ風邪引くよ……ううん、絶対死ぬ)


 今にも泣きそうだ。


「あっ、ルイ! 暴れないで石鹸で洗うからー」


 そう言い美咲は泪を捕まえた。


「フゥー、落ち着いてくれたか」


 美咲はそう言い石鹸を手にし泡をつくると泪を洗い始める。


 洗われ泪は最初なんか変な感じだったが段々気持ちよくなってきた。


 泪を洗い終えるとシャワーで体の泡を流し始める。


(……冷たい。だけど気持ちいいかも)


 そう思い泪は眠りそうになった。


 その後、美咲は泪を洗い終えると持って来た小さなタオルで軽く包み籠に入れる。


 そして美咲は自分もシャワーを浴びたのだった。

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