縄張りと二羽の青い鳥

 あれから泪はドルムスの屋敷の庭を飛び回っていた。


(このあとどうなるの? 今の私はみていることしかできない。だけど、気になる……)


 そう思いながら枝から枝へと移っている。


(んーなんだろう? 至る所から視線が……)


 泪は嫌な感覚に襲われその視線から逃げていた。


 すると泪の目の前に一羽の青い鳥が現れる。


「ねぇ、あなたどこから来たの?」


「あーえっと……どこからかは覚えてないけど。さっきまで、向こうにある家にいたの」


 そう言い泪は、美咲と司の家へ羽を向けた。


「ふーん、そうなのかぁ。じゃあ、人に飼われているのね」


「うん、あなたは違うの?」


「そんな訳ないでしょ。アタシは、自由主義なのよ。それはそうと、飼われてたなら知らなくて当然ね」


 そう言われ泪は小首を傾げる。


「何が?」


「何って……流石に気づいてるわよね? あなたをみている者たちがいることを」


「ああ、そのことかぁ。でも、それがどうしたの?」


 それを聞きその青い鳥は、ハァーと溜息をついた。


「縄張りよ。外の世界にはね、そういう争いが絶えないの」


「……縄張り。じゃあ、私をみているのって」


「あなたは他者の縄張りに居るってことね。それも、移動の度に違うヤツに睨まれてるわよ」


 それを聞き泪は、体中から大量の汗が流れ出る。


「ど、どうしよう……。って、もしかして今私が居る所って……あなたの縄張り?」


 それを聞き青い鳥は、コクリと頷いた。


「そう、ここはアタシの縄張りよ。だから、忠告に来たの」


「そうなんだね……ごめんなさい。でもどうしよう……あの家を監視してたいの」


「監視? なんで、そんなことしてるの」


 そう言い青い鳥は首を傾げる。


「あ、それは……」


「んー……なんか訳ありみたいね。そうだなぁ……ちょっと待ってて、ダーリンに相談してみるから」


 そう言うとその青い鳥は飛び立っていった。


(……ダーリンってことは、彼氏か旦那さんだよね。ヒョエー……)


 そう考えると泪の顔は、茹蛸状態になる。


 そうこう考えていると泪の目の前に大きめの青い鳥がとまった。その隣に青い鳥がとまる。


「お前か、オレたちの縄張りに無断で入って来たヤツは……。うむ……みたこともない種類だな」


「そ、そうなんですね……ハハハ……」


 そう言い泪は苦笑した。


「ねぇ、ダーリン。さっき話した件だけど」


「ん? ああ、そうだな。まぁ問題ないだろう……居るだけなら。それに、悪いヤツにはみえない」


「あ、ありがとうございます。用が済んだら元の家に戻りますので……」


 そう言い泪は頭を下げる。


「それと、何か聞きたいことがあったら言え。答えられることなら、教えてやる」


「分かりました。でも、今は大丈夫です」


「そうか……なら、あとで何かあったらオレかコイツに聞くといい」


 大きな青い鳥は、青い鳥へ羽を向けた。


「そういう事。それと、偶に話をしましょうね」


 そう言い青い鳥は、ニコリと笑みを浮かべる。


 それを聞き泪は、ウンウンと頷く。


 その後も泪は二羽の青い鳥と話をしていたのだった。

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