村長の意外な正体

 ここはログロス村。雲一つなく快晴である。


 なぜか泪は、外にいた。


 そう、あれから泪は司に外に追い出されたのだ。


(……まぁ、部屋で暴れたから仕方ないか。ハハハ……)


 泪はそう思いながら空を飛んでいる。


(そういえば、誰かくるって言ってたなぁ。ちょっとみてこよう……)


 そう考えると帝都から来た偉い人が居る方へ向かい飛んでいった。



 ▼△★△▼☆▼△



 ここは村長の屋敷。外観は……然程、豪華でない。ボロとまではいかないが、綺麗とも言えないだろう。中は、流石に綺麗に整頓されているようだ。


 泪は村長の屋敷の窓枠にとまり中を覗いていた。


(……中の声が頭に入ってくる。必要な会話だから聞けってことかな?)


 そう思いながら屋敷の客間らしき場所をみている。そこには、村長と帝都から来た者がソファに座り話をしていた。


 因みに村長の名は、ドルムス・グムド。年齢は三十一歳である。……村長にしては、まだ若いようだ。


「……わざわざこんな辺境にある村にお越し頂きありがとうございます。それで、今回のご用件は?」


「用件か……」


 そう言われその帝都から来た者は、泪がとまる窓の方をみたあとドルムスへ視線を向ける。


「……!?」


 泪は驚いた。


(……似てる。カイルディさんに……。まさか、先祖とか? 髪の色も……似てないのは、若干キツメの目つきかな)


 そう思いながら更に話を聞く。


 その帝都から来た者の名前は、セフィルディ・リゲル。年齢は、二十八歳である。役職は、神官だ。


 そう泪が思った通り、カイルディの祖先だ。役職まで一緒である。


「セフィルディ様、どうされました?」


「いや、窓に小鳥がとまっていたのでな」


「これは……気になるのでしたら追っ払いましょう」


 それを聞きセフィルディは、ドルムスを静止させる。


「よい、そのままで。ただ、可愛いと思っただけ」


「そうでしたか……確かに可愛いですね。どこから来たのでしょう?」


「そうだな。それはそうと、今日ここに来た理由……」


 セフィルディはここに来た理由を説明し始めた。


「そういうことですか……セフィルディ様も大変ですね」


「それは、貴方の方だと思いますが……」


「いえ、私は……既に権利を放棄しております。ですので、この件に関わるつもりはありません」


 そう言いドルムスは、セフィルディを睨んだ。


「いいえ、恐らく城の者の一部はそう思っていないでしょう。それに亡き王……貴方さまの父君は、認めておりませんよ。死ぬ間際も……」


「それ以上、言うな!? 私は、城に戻る気などない。もし狙われるようであれば、自分でなんとかする」


「いい加減にしてください!! 第一王子の貴方さまが、跡を継がずに……あのバイゼグフ王子に譲るつもりですか?」


 そう言われドルムスは、一瞬だけ躊躇った。


「……アイツは相変わらずなのか? 私が退いても……」


「ええ、変わりませんよ。このままでは、帝都がなくなります」


「そうか、そこまで城の借金が増えていると。だがなぁ……」


 ドルムスは、どうしたものかと考え始める。


(えっと……ドルムスさんが村長で、帝都の王子さま? でも、なんでこんな所にいるのかな……)


 そう思いながら泪は、二人の話を聞いていたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る