第11話 薬作成

「あっ……とっ……ちょっ……とかな?」


 聞いてきたのはミリア。

 俺がおぶって走ってるから、言葉が途切れ途切れだ。


 あぁ。見えてきたぞ。

 薬って誰に頼めば作れるんだ?


「んー? 誰だろうね?」


 おいおい。

 今から探すのかよ。


「なんかー。道具屋さんに回復薬とか売ってるじゃない? だから、道具屋で聞けば分かると思うんだけど……」


 じゃあ、まずは道具屋な。


 もう街に着く。

 街に着くとミリアを下ろした。


 ミリア、道具屋どこだっけ?


「こっち!」


 おぶられてただけで体力がまだ有り余っているミリアは駆け出す。

 入口からメインの通りを通って途中で右。

 少し走ったら左に道具屋がある。


「はぁ……はぁ。はぁ。明かりが消えてる……」


 裏が家じゃないのか?


 裏に走って扉を叩く。

 ドンドンと叩く音が暗くなった街に響き渡る。


「おうおう。なんだ? 今日は店じまいしたぞ?」


「石化病を治す薬を作りたいんです! 作れる人を教えてください!」


「あぁ? でも、ありゃ、ミストン花がないと作れねぇぞ?」


「これです! 採ってきました!」


「おぉ。そりゃ本物だ。よしっ。なら、ここを左に一ブロック行って、左に曲がって、二ブロック行ったところを右に曲がる。角から三件目の家が薬の調合をしてる婆さんがいる。頼んでみな」


「わかりました! ありがとうございます!」


 礼を言うと走って教えてもらった家に突き進む。

 ミリアの後を追う。

 着くと、すぐさまコンコンッとノックするが、返事がない。


 婆さんだって話だったしなぁ。

 もしかしたら寝ている可能性もあるぞ。

 これで出てこなかったらヤバいぞ。


 焦っていると。

 骨がカタカタ鳴っている。


「ナイル? うるさいよ?」


 すまん。

 なんか気持ちが焦ってたら骨がカタカタいい出したんだ。


「もう。焦ってもしょうがないでしょ?」


 そういうと再び扉を叩いた。

 ドンドンッと叩き続ける。

 叩きながら「こんばんはー!」と呼び掛けてみる。


 どれくらい叩いただろうか。

 ミリアの手も叩きすぎて赤くなっている。

 もう違うところを探した方が早いんじゃないか?


 ミリア別の──────


「なんだい? もう夜だよ?」


「あっ! おばあちゃん! 石化病の薬を作って欲しいの! ミストン花はあるんだけど……」


「ん? そこに居るのは骸骨かい?」


「そう! じゃあなくて、それはどうでもいいから! 薬をお願い! 間に合わないかもしれないの!」


 ミリアがそう言うと俺を見ていたお婆さんの目付きが変わった。


「それじゃあ、仕方がないね。少し時間がかかるよ。中へお入り。そこの骸骨さんも中に入りな」


 俺にまで気を使ってくれているみたい。

 優しいお婆さんだな。


 中に入ると玄関があってその先はリビング。

 お婆さんはその先の部屋に入っていく。

 何やらカサゴソと準備をしているみたい。


「あら、ごめなさいね。ちょっと待ってね。今お茶でも……」


「おばあちゃん、私達のことはいいから早く薬を作ってちょうだい?」


「あら。そうかい? じゃあ、そこの椅子に座ってておくれ。じゃあ、ミストン花を貰えるかい?  全部薬にしようかね? 一回の量はそこまで多くないよ? 他は売ればかなりいい金になるはずさ」


 そう教えてくれた。

 それだと、お婆さんに旨味がないだろうに。


「でも、それだとおばあちゃんにお金入らないよね? おばあちゃんが売ったら?」


 ミリアはそう提案する。

 薬を作って貰えたんだ。

 俺達はそれで十分だ。


「街のみんなの噂になってるよ。リーフの娘のララの依頼を受けてくれたってのは、あんた達だろう? 骸骨を連れてたって言っていたからね」


「あの子! ララちゃんって言うの? 知らなかったけど、家はパン屋さんの隣って言ってた!」


「なら間違いない。リーフはあたしの娘みたいなもんさ。リーフは何者かに石化病になる薬を盛られた様なのさ。治そうと思ったんだけど、ミストン花を手に入れるには金がいる。ララは報酬を払えなかったんだろう? なら、薬を売れば十分な額になるさ」


 そういう事か。

 みんな知ってたんだ。

 きっと助けようと皆も必死だったんだ。


 だから、俺が骸骨が確認したのか。

 ミストン花を採りにいったというのが、骸骨を連れた女の子だったからか。


 ありがとう。

 婆さん。


「おばあちゃん! ありがとう! じゃあ、お願いします!」


「あいよ。少し待っときな」


 奥の部屋に入ると扉が閉められた。

 中からは何かをすりつぶすような音が聞こえてくる。

 液体を注ぐ音が聞こえたかと思うとまたすりつぶすような音が聞こえてくる。


 何回か繰り返した後にボッという火がついたような音がした。

 

 なんかコンロみたいなのあるのか?


「魔石コンロじゃないかな? 魔石を動力にして炎を出すんだぁ」


 ほぉ。

 この世界にはそういうのがあるのか。

 前世では無かったな。


 グツグツと煮るような音が聞こえてくる。

 煮沸してるんだな。

 なんかいい匂いがしてきた。


 これがミストン花の匂いなんだろうか。


「できたよ」


 奥から出てきたお婆さんは小瓶を五個程持ってきた。

 全部渡してくれる。


「全部もっていきな。一回でひと瓶だよ。後は売りな」


「ありがとう!」


 俺も頭を下げる。


「こちらこそ。ありがとう。リーフを助けてやっておくれ」


 お婆さんは聞こえるか聞こえないかというくらいの大きさの声で呟いた。


 さぁ、いよいよ、ララちゃんの家へ向かう。

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