第3話 スキル取得

「ミリアさん、生きていて良かった。無事で何よりです」


 ギルド職員がそう言って出てきてくれた。


「ギルドの中で戦ってしまってすみません! 私がナイルにお願いしました」


「ナイル?」


「この子です」


 俺の手に腕を絡めてくる。

 それの仕草は恋人の腕に絡めるような仕草だった。


 こんな事されて、顔があったら赤くなっているんだろうなと思っていた。


「ナイル? 顔が赤いよ?」


 はぁ?

 顔ないでしょ?


「骨が赤くなってるよ?」


 そんな事ある?


「ふふふっ。随分可愛らしいテイムモンスターね? ミリアの事が好きなのかしら?」


 ギルド職員にそう聞かれるが、そっぽを向いて知らん顔をしてみる。


「あらあら。モンスターでこんな人間らしい反応が見られるとは思わなかったわ」


 そりゃ、前世の記憶があるモンスターなんて居ないだろうよ。

 バレたら変な研究に使われそうだな。

 ミリア、バレないように頼むぞ。


「そ、そうですよね。なんか不思議な子なんですよぉ?」


「見た目は不気味だけど、いい子なのね。じゃあ、テイムモンスターの証を付けてもらっていいかしら?」


「はい! 何つけるんでしたっけ?」


 ミリアが聞くとギルド職員が奥から持ってきてくれた。

 

「バングルか、ネックレスなんだけど、どっちがいいかしら?」


「わぁ! ネックレス可愛いね?」


 ミリア、戦ってる時に邪魔になるからバングルにしてくれ。


「むー。そっか。そこまで考えなかったな。ごめんね。じゃあ、バングルで」


 ミリアがそう言うと、ギルド職員が怪訝な顔をする。


「えっ? そのスケルトンの言葉、わかるの?」


「えっ? 普通、テイムしたら分かるものじゃないんですか?」


「分かるんだけど、普通魔物の言葉分からないでしょ? 大体は気持ちが伝わってきて、何となく分かるくらいらしいわよ? 全部理解できるの?」


 そうなのか?

 全部理解できるのは異常だって言うことか。

 それだと話したらまずいか?


「全部理解できます! 私、ナイルと普通に会話できるんです! 私達が特殊だとしたら嬉しい!」


 本当に嬉しそうにそう言うミリア。

 そんな顔で言われたら自分の身を守ってる俺が馬鹿みたいじゃないか。

 そうだな。


 俺達が特殊なのか。

 俺が特殊なだけなのか。

 まぁ、関係ないか。


 俺はミリアの為に剣を振るう。

 それがどんな事であろうとな。

 ミリアは間違った選択はしないと思うから。


「ふふふっ。そう。じゃあ、バングルね。後、これは忠告よ。あまり目立つとランクが低いうちはテイムモンスターを奪おうとする者が現れかねないわ。気をつけるのね?」


「わかりました! 有難う御座います!」


 礼を言うとギルドを後にした。

 さっきの奴らは治療院にでも行ったんじゃないだろうか。

 周りの人が言うには魔法でくっつくらしいからな。


 外に出ると噴水のある広場に行き、ベンチに座る。


「じゃあ、まずはスキルポイントでスキル獲ろうか」


 そうだな。


「ステータス」


 ミリアがステータスウインドウを開く。

 テイムモンスターの部分をタップしてスキルウインドウを開く。


「まずは、何がいいかな?」


 まずは身体強化系のスキルあるか?


「あるよぉ。今のポイントで獲れるのは【頑強】【硬化】【身体強化】かな? ただ、【頑強】と【硬化】はパッシプスキルだね。【身体強化】はアクティブスキルだよ?」


 俺、骨だからな。

 とりあえずは硬化がいいかもな。


「たしかに! じゃあ、そうしよう!」


 【硬化】をタップする。

 体がチカッと光った。

 実感は湧かないが、硬くなったんだろう。


「今の所はこれしかとれないね?」


 あぁ。充分じゃないか?

 今のところはな。

 これからだろう?


「うん! そうだね! よぉしっ! 明日から依頼受けるぞぉ!」


 今日のところは休むぞ?


「うん! 私が宿泊してる宿に行こう!」


 ミリアの案内に従い宿へ向かう。


 なぁ。念話切ってくれないか?


「あっ。うん。わかった」


 少し暗い顔をしながら念話を切ってくれた。

 そんなに嫌なのかと思ってるんだろう。

 そういう訳では無い。だが、色々思うところがあるから切ってもらったのだ。


 少し肩を落として前を歩いていく。

 ミリア悪いな。

 けどな、同じ部屋に泊まらなきゃいけないんだろう?


 色んな意味で精神的にくるものがあるよな。

 一応前世は男だからな。

 今は性別という概念はないが、気持ちは男のままなのだ。


 まぁ、俺は睡眠が必要ないと思う。

 だから、見張りとして居ればいいんだろうな。

 そう思ったら別に何も気にする事はないな。

 吹っ切れた。


「おばちゃん。今日からこのテイムモンスターも一緒だけど、良いですか?」


「あぁ。構わないよ。ただ、他の人に迷惑かけないように言っておいてちょうだいな」


「はい! うちのナイルは賢いので大丈夫です!」


 ミリアが胸を張って自信満々にそう言う。

 すると、驚いた顔をしたおばさん。


「スケルトンがそんなに頭がいいのかい?」


「はい! ナイルは賢いです!」


 ペコリと頭を下げる。


「あら、礼儀正しいね。ビックリしたよ! ミリアちゃん、なんか困ったことがあったら言いなよ? 後、食事はこの奥の食堂だからね?」


「はい! 有難うございます!」


 部屋に行くと荷物を置く。

 ベッドに寝転ぶミリア。

 皮鎧など着ている訳だが、寝転ぶと肌が所々見えて目のやり場に困る。


 目はないから見てるのは分からないとは思うが。


「ナイル? どこ見てるの? あんまり見られると恥ずかしいんだけど?」


 なぜわかる?

 この子は鋭い子だなぁ。うん。

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