現在

町外れにあるひっそりと佇む小さな喫茶店『ZERO』

開店時間は11時から15時まで。


ドアを開けると、カランコロンと鐘の音が鳴る。

中に入ると、

落ち着きのある深いブラウンの内装が特徴的。

アンティークやヴィンテージの家具で揃えられている。


カウンターには、髭の生やしたマスターがコーヒーを丁寧に淹れている。


カウンター席に、眼鏡をかけた男性が一人。

ボックス席には、女子高生が一人、コーヒーを飲んでいる。


もうひとつのボックス席には、母親と父親らしき男女が向かい合わせで座って、コーヒーを飲んでいる。


あちらこちらのボックス席には、男子中学生が一人、サラリーマン姿の男性が一人。

若くて首に龍があしらわれた刺青が入っている青年が一人。


それぞれ、一人で座っている。

そして、コーヒーを飲んでいる。



けれど、異様な雰囲気がする。

誰一人、声を発していないのだ。

ただ、黙って俯きながら、コーヒーを啜っている。



ただ、聴こえるのは、レコードから流れる心地よい音楽だけだった。



カウンターの奥を見ると、写真が飾られている。

家族写真のようだ。

両親に挟まれた真ん中の女の子は女子高生のようだ。

満点の笑みを浮かべている。




異様な雰囲気のする喫茶店の中に飾られたその写真は、不釣り合いな気もする。

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