第5話 名刺
車が歯科医院の駐車場に着いた時には
七時を回っていた。
すでに、院内は薄暗く人の気配は無かった。
出入り口のところまで行くと
シャッターが半分だけ開けてあった。
「すいませーん。服部です。」
緊張しながら声を掛けると奥から
先生が出て来た。
いつもはマスクを付けていたが、外していて
穏やか笑顔で迎えてくれた。
「服部さん、大丈夫?大変だったね。慌てなくても良かったのに。」
「いえ、診療時間外なのに、ご迷惑をおかけしてすいません。」
「いいの、いいの。僕は自宅が隣だからね、
みんなにしてる事だから。さあ、診ましょうか?」
「うーん。この歯はやはり残すのは難しいね。
また化膿してきてる。
ブリッジが作れるから諦めた方がいいね。
このままだと歯を支える骨まで溶けてしまうんだ。やるかい?」
ナミコは自分でも調べていたから、その説明に納得できた。
「わかりました。お願いします。」
治療が終わって薬を貰って、帰ろうとした時、
先生が言った。
「時間外でも大丈夫だけど、時間外は電話に妻が出る事があるんだ。
妻はあまり時間外の患者さんが好きじゃなくてね。だから、僕の名刺に携帯の電話番号を
書いておいたから、メールで知らせてくれたら
いいからね。」
先生歯名刺を手渡てくれた。
ナミコは一瞬、戸惑った。
でも、この先生、他の患者さんにもそうしてるんだわ。
「はい。そうさせていただくと助かります。
ありがとうございました。」
医院を出て駐車場の車の中で、ナミコは
名刺を読んだ。
小島歯科
院長 小島 ヤスオ。
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