初日02:15:22/日向町立図書館/前田千尋

誰もいない図書館の椅子に座り、一息ついた。


ここまで来るのに時間はかからなかった。

まだ異形の者はこちら側まで来ていないだけだろうか?

それとも、何かを追いかけてここから立ち去ったか・・・


私は図書館内を適当に歩き回り、私がこの前の事件を調べる際に入り浸った郷土資料のコーナーにたどり着いた。


「・・・?」


私はその近くのイスが3人分ずれていることに違和感を持った。

懐中電灯を近くのイスに向けると、テーブルの下に紙きれとボールペンが落ちている。


私はそれを拾い、イスに座った。


「浩司の字だ・・」


紙切れに書かれた文字を見て、私は安堵した。


「公民館」


短くそう書かれた紙を胸ポケットに入れ、M1を握りなおす。

出入り口に向けて歩き出すと、出入り口方向からガラスを突き破ったような音がした。


私は奥歯をかみしめると、懐中電灯を消し横にすっ飛んで本棚に身を隠し、出入り口をのぞき込む。


「浩、、、司ィ~ 逃げ・・・・・・・・・・・・ないでよぉ~」


夢なら醒めてくれと思った。


ガラスを突き破ってきたのは私と同年代くらいの子2人ほど。

もっともすでに人ではなくなっていたが・・・

まちがいない・・・あの声あの顔は加奈と、善明だ。


「そこ      にいるのは  しって る ん だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

「」


何か大きなものを振り回す風切り音を発しながら私のいる郷土資料コーナーまで来ている。


このコーナー・・窓はあるが開かない構造になっていて、本棚も2つしかない。

つまりは、完璧にコの字の奥に追い詰められている状況なのだ。


私は左手に込めた力を抜き、息を整える。

懐中電灯を付け、あとは無心で本棚から飛び出た。


「あああああ  千     尋      探したん  だよ」

「よ           んで も 気づいて  くれ なかったじゃない            か」


目の前に映った2人は最早人間の形をしていない。


なにと混ざったのか、加奈の左半身は別の生命体になっていて、左だけで3本ある人間の腕・・・手には丁寧に危ないものが握られている。

足は2本だが、右足は綺麗な加奈のものではなく、人の指と猫の足を足して二で割ったようなものになっていた。


善明はもっと酷い・・・最早人の言葉を喋れないように変わってきているのどの部分は昆虫の一部が肥大化したような形になっていて右腕はトンボの羽が巨大化したものになっている。


私は普段は絶対に感じない心臓の鼓動と、背中に流れる冷や汗を感じながら、目の前の2人と対面する。


これまでの異形と違って、すぐに走ってこなかったり、飛びかかったり、わめき散らさないのが、逆に不気味だった。


「・・・」


私は徐々に歩いてくる2人に銃口を向けて息を整える。


今すぐに人間に戻って、千尋なにしてるのさって言ってくれればすぐにでも銃を下ろしたいが、その望みは最早永遠に訪れないことはすぐに理解できた。


小さな図書館に轟音が2回響き渡る。


その直後、二人だと識別できた顔の半分が真っ赤に染まって肉塊になり、嫌な音を立てて倒れた。

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