初日01:35:59/日向町役場/桜井十郎
「まずいことになっておる」
町役場の最上階から、町を見下ろして、自分の席に座ると、そう言った。
「儀式に邪魔が入ったと聞いた・・・」
目の前の男・・・佐藤清志は昔の愛用銃を点検しながら言った。
「組の者は一人残らずやられたようだな」
「ああ、そっちについては何も証拠が残っていない・・・」
「何も・・?」
「ああ・・一つもだ」
そういって佐藤を見据えた。
「十郎、儀式は終わっとらん・・・平元を捕らえ、儀式を完遂すれば終わること・・・頼めるか?」
佐藤に問う。
「もちろん・・ただ・・・」
目の前の男は小銃を肩に担ぎながら言う。
「平元のところに来た子が引っかかる」
「あの大人しい子か?」
「ああ、眼が一般人の其れとは違った」
「・・・気になるなら好きにするがいい」
私はそういって懐から取り出した煙草に火をつけた。
「ふむ・・・」
佐藤は部屋の扉に手をかけると、足を止めて此方に振り返った。
「ああ、忘れていた・・・」
「何をだ?」
そう尋ねると、扉にかけた手を素早く小銃にかけ、銃口を此方に向ける。
「何をするつもりだ?」
「お前で最後なんだよ」
佐藤は不気味な笑みを浮かべてつぶやくように言った。
「あの時の不始末・・・相棒の仇さ」
その声と、手に握られた小銃が発した閃光が、最期の光景になった。
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