第3話

目が覚めた。俺は辺りを見渡す。もう陽は高く昇っているようだ。そして、自分がまだ生きていることに喜びを感じる。


「あーあー。うーあー。」


言葉は出ないが拾ってくれた婆さんに気づいてもらうために俺は声をあげた。


「起きたかい。ちょっと待ちな。」


婆さんは哺乳瓶を持って俺のほうに立ち寄って来た。異世界転生で一番最初のテンプレともいうべき母親の授乳タイムは婆さんにならなくて済んだようである。


俺は哺乳瓶の中の粉ミルクと思わしき液体を飲み一服した。(っていうか赤ちゃんだから粉ミルクで一服出来たんかな?)


本格的に俺は赤ん坊になってきたようである。


ミルクを飲み終えた俺を見て満足そうな顔をしながら婆さんは廃墟の奥の方へ入っていった。


廃虚は小さめの倉庫みたいになっており、奥までパッと見ることができるが奥にはあまり物は置かれていない。婆さんは何を取りに行ったのだろうか?




・・・・・・


しばらく時間が経った。婆さんは帰ってこない。捨てられたのか?いやそんなはずはないだって、婆さんの着替えはそこらへんに転がってるから。でも捨てられたばっかだし・・・。少しマイナスに考えすぎかもしれない。落ち着こうおやすみなさい。





~◇◇~ ??


「あれ、おばあちゃんいないじゃん。ま~た胡散臭い占いでもやってるんでしょうね。めんどくさい人、あの人だったら宮廷魔術師とか余裕なのになんでなのかな~?まぁいっか。」


冒険者をしながら暇なときはいつも育ててもらったおばあちゃんのところにいる。というかおばあちゃんのところ以外に行くところがない。常識がないと言われる。まぁなくて当たり前なんだけど。


おばあちゃんいないなら帰ろうかなと思い始めたときにふと寝息が聞こえたが気のせいだろう。


「冒険者って大変だな~。」






~◇◇~佐藤冬也


俺は眠りから覚めた。すると当たり前のように婆さんはいた。どういうことだろうか。


「いい子でちゅね~。いないいないばあっ!」


ちょっと発言に気持ち悪いと思ってしまう内容があったが置いておこう。多分婆さんは家にいなかった、と思う。だから婆さんは仕事に行かなければならないけど俺を不安にさせないためにこっそりと家から出て行ったのか?


まぁどれだけ考えてもそれを知るのは婆さんだけだ。


っていうかお腹空いたんだが普通に昼はご飯食べてないんだよな・・・っと思うとこれからの生活が不安になるがまぁ拾ってくれただけましである。


「うっあ~。あーあー。(ご飯頂戴)」


婆さんは俺が何を言ってるのか察したのか哺乳瓶を持ってきた。


少し貧乏?(今のところは何も不自由はないが)だけど平凡な日常がこれから始まると思った。


俺は前世で自殺してしまった自分を多少不甲斐ないと思いながら次の人生で平凡に生きられるように努力したいと思った。


これから何が起こるかもしらないまま。

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