(AI)八休さん

@motteke

八休さんと屏風の虎

 時はネオ室町時代、深く謎に包まれた世界。一筋の光が殿堂の開け放たれた扉から広場に差し込んだ。高い天井から落ちる光の粒は石畳を華やかに照らし、それはまるで世界が新たな事件の幕開けを予告するかのようだった。


 そこに現れたのは、一人の男。名前は八休、長身で筋肉質の体格が特徴的だった。彼の肩幅は普通の男の一回り以上広く、その体は数々のトラブルを解決するために鍛え上げられていた。彼の背中には龍のタトゥーが刻まれており、その目つきは鋭く、どこか冷たい光を放っていた。


「八休さん、参上!」


 八休の豪快な声が広場に響き渡る。一方、広場の向こう側には一人の男が立っていた。その名は足利義満、この土地を統治する権力者であり、将軍だった。彼の立つ豪華な城は人々に畏怖の念を抱かせ、その傲慢な口調は周囲を圧倒する。義満は八休を見つめ、あからさまに彼の知恵を試す様子を見せた。


「八休、屏風に描かれた虎が夜な夜な徘徊し、城内の人々が危険にさらされている。この虎を退治せよ。」


 義満の言葉に、八休は深くうなずいた。それは彼の得意とする領域であり、また、様々なトラブルを解決することが彼の生き甲斐だったからだ。


「では、屏風の虎を出してください。」


「はっはっは、屏風の虎が出てくるわけがなかろう。」


 義満は言葉を一瞬滞らせ、驚きを隠せない表情を見せた。しかし、八休の目は揺るがず、彼の問答が始まった。


「なるほど、あなた自身が屏風から虎が出ないと言うのだな?、それならば用はない、帰るとしよう。」


 八休の独特の語り口に足利は驚きつつも、ほんのりと笑みを浮かべた。それはやはり、八休の思考に対する試練を楽しんでいるからだろう。彼らの間には深い理解と尊敬、そして競争が混じり合っていた。


「おお、なかなかやるではないか。」


 しばらく考え込んだ後、義満は誇り高く宣言した。


「この義満に出来ぬことはない……」


 義満の言葉を受け、八休は微笑み、彼の挑戦を受ける準備を始めた。義満は深いため息をつき、屏風から虎を出すための儀式を開始した。


 屏風は大きな飾り立てられた部屋の一角に立てられていた。美しい金箔があしらわれ、虎の姿が大胆に描かれている。義満は静かにそれに手をかざし、古代の呪文を唱え始めた。


 すると、不思議なことが起こった。屏風の虎がぐにゃりと動き、その大きな体が現実のものと化した。虎の毛皮は金色に光り、強大な威力を感じさせた。その力強さと、屏風から現れた虎の存在感は全員を驚愕させ、広場は一瞬静まり返った。


 八休は虎を見つめ、そこには冷静さと決意が混ざり合った表情が浮かんでいた。彼の手には、武器も盾も無い。だが、その目には迷いの影すらない。


 その時、八休と虎の間に新たな力が宿る。八休の背中の龍のタトゥーが静かに光り始め、その光が次第に強くなる。それは青白い光で、その美しさは息を飲むようなものだった。


 八休の背中から現れた龍は神秘的な光を放っており、その姿は一瞬で全てを覆いつくした。八休と龍が一体となり、力を合わせて虎に立ち向かった。虎はその圧倒的な力に押し潰され、屏風へと戻るしかなかった。


 八休は龍の力を借りて虎を退散させ、安堵の息をついた。それから、彼はしっかりと立ち上がり、足利義満将軍へ向けて深く頭を下げた。


「これで安心して頂けましたか、将軍殿。」


 虎が消え去った後、広場には静寂が広がり、全員が八休の偉大な力に驚きと尊敬の眼差しを向けていた。足利義満もまた、彼の実力を改めて認識し、その知恵と力に敬意を表した。


 その後、八休さんは新たな提案を足利義満将軍に持ちかけた。それは、虎の代わりに龍の力で城を守ることだった。義満は、その提案に驚きつつも、八休さんの力を信じ、その提案を受け入れることを決めた。


 しかし、その提案には高額な費用が必要であった。八休は顔をしかめながら言った。


「新たな屏風を作るには、8万両が必要であります。」


 義満はその金額に驚き、しばらく沈黙した。しかし、彼は八休の力を知っていた。そして、城を守るためにはどんな犠牲も厭わないという決意もあった。


 だが、8万両は決して小さな額ではなかった。義満は一瞬、困惑した表情を見せた。しかし、彼は八休との問答の末、その提案を受け入れることを決定した。


 虎の出現が終わり、一時的に安堵が広がる一方で、8万両の出費は義満にとって非常に大きな負担だった。しかし、八休の言葉には否応なく頷くしかなかった。


「8万両を工面できたら、また皆さんにお伺いしましょう。」


 そう言って、八休は軽快な足取りでその場を後にした。彼の去った後も、義満はしばらくその場に立ちすくみ、八休の背中を見つめ続けていた。


 めでたくなし、めでたくなし。

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