呼び出し音の先

野栗

呼び出し音の先

これってもしかして……許されない恋? 


聞いてないわよ。

聞いてないってば。


「明日また会えたら」って……

ねえ、どういうこと? 

何なの?


眠れぬ夜。

明日なんか、待てない。


もういや!

ちゃんと話して! 今すぐ!


ースマホの上で、震える指先。


……


……もしもし? あたし……


……あの、どちら様ですか?


……あ、あの……


うちの人に、何かご用事ですか?


……すみません、代わって頂けませんか?


あのさ、あなた、本当にあつかましい人ね。

こんな真夜中に。

うちの人と、どこで、どんな出来事があったか知らないけど。

知りたくもないけど。


……すみません……


ただの鉄の塊になったスマホを握りしめて立ち尽くす闇の中。

トンネルの左と右、はるか先で微かに見えるふたつの光。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る