第28話
私は三日月屋へ向かった。
遠くにある、あの緑の村。
歩いて行けってかい?
冗談じゃない、遥か遠くに見える山を目指すようなものさ。
山は見えていても、何処まで行こうが山の大きさが変わらない。
そんなところでね、私は三日月屋へ行って二輪を用意してもらうことにしたよ。
ホテルから三日月屋まではそう遠くない。
ところがどうだい?
無いじゃないか、三日月屋が。
店はあるにはあるが閉店だって?
まさか、ここも見つかってしまったのか?
私は、ゆっくりと通り過ぎた。
まるで三日月屋に御用は無いと言わんばかりにね。
そのままカインが居たビルを目指した。
橋を渡ってカインが居たビルの地下室へ降りて行った。
鉄の扉に付いている呼び鈴を鳴らしたんだ。
中からは何んの返事もなかったが、暫くすると少しだけ扉が開いた。
「入れ」
とカインの声が聞こえた。
懐かしいってものじゃないが、会いたく無い奴なのに、安堵したよ。
私は招かれるままに中へと入った。
「ネイサンの店が閉店しているんだが?」
と私は言った。
「大丈夫だ、時々店を変えて、奴らに気付かれないようにしているだけだ」
「なるほど、それがマスターや譲との違いっていうことかな?」
「何しに来たんだ」
「ああ、それね」
「まさか、三日月屋の閉店報告に来た訳じゃ無いだろ?」
「ちょっと三日月屋に用が有ってね。できれば移動手段が欲しいんだが」
「何が欲しい」
「そうね、二輪が欲しいね」
「そんなものは無い、ここは新世界だ。タイヤの付いているような乗り物は無い」
「ああ、分かっているよ。この街を浮かんで走っているバイクのような乗り物が欲しいんだが用意してもらえるだろかな」
「ちょっと待っていろ」
「ああ、分かったよ」
「それと待っている間におかしな真似はしない方が良い」
「人のものを勝手に触ったりはしないさ」
「懸命だ」
「猫の目をした監視カメラでも付いているのかい?」
「そんな可愛いものじゃない、俺がここを出ていく前にレーザーのスイッチを入れる」
「で?」
「動けばレーザーに触れることになる」
「怖いね、触れるとどうなるんだい?」
「触れたところが焦げ落ちるだけさ」
「人の体のことを簡単に言ってくれるね」
奴は、レーザーメスのような光線が出るスイッチを入れて出ていった。
部屋は何一つ変わっちゃいない。
どうもレーザーは目に見えないようだね。
そう思うとやけに静かな部屋じゃないか。
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