第17話



 有難いことにジンはキンキンに冷えたままだった。

流石に一気飲みは出来なかったが、とんでもない世界から帰ってきた時のお迎えには最適だ。

机の中の木箱から葉巻を一本取り出して火を付けた。

紫色の煙が私を優しく包んでくれる。


「どういうことなんだ?」


 それだけを呟くように声に出して言うと、頭の中は空っぽになってしまった。

兎に角、明日、海道じーさんか、美和ばーさんに会おう。

そして、話をしよう。

今は、それ以外に解決策は何もない。

状況把握が先決だ。


 その前に考えをまとめてみよう。

当然のことだ、人に何かを聞く前に、自分自身を整理してみなきゃならない。

ただ単に夢だったら? 私の方が狂っていると思われることは請け合いだ。


 私は葉巻を咥えながら、机の前から立ち上がり、ズボンのポケットに手を入れた。

有ったんだ、有ったんだよあの金属のペンが。

こんなとんでもない武器が、この時代に有るわけがない。

しかも、私のズボンのポケットの中にだ。

単なる夢ではない。

そう思うに時間なんて掛からなかった。

これが現実だとすると?

会うしかない、じーさんかばーさんに。

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