〜Ⅳ.丐命〜

 父は偉大だった。死を恐れず、常に冷静であった。彼が最期の突撃をする時でさえ、彼は何をも恐れるそぶりは見せなかった。皆が口を合わせてそう言う。もう少し長く父と暮らせば私もそうなっていたのだろうか。まぁ、それには、もう遅すぎた。

 私は仲間と共に汽車に乗り、列甲軍資庫へ行った。そして、我々は飛行船に乗った。2時間程たっただろうか。帝國城が見えた。まず、我々は飛行船より鏑矢を放った。敵はそれに即座に気がつき立派な騎士が城から出て我々を睥睨した。私はフィリウルテルに爆撃用意をさせるよう命じた。

「私はパラシュートで下に降り、あの驕矜とした漢と一騎討ちをする。」

「あまりにも薛越しています。どうか、踏み止まって下さい。」

「私を見縊るでない。そして私が勝つまで手を出すな。」

 私は愛鹿に乗り飛行船から降りた。

「我こそはケンゲ王国近衞隊王国直属衛兵隊長、ジェス•フェーニスである。」

「我こそは東ストビアン帝国一等聖騎士、ワルフ•マル•セヴンタリアだ。ジェス•フェーニス、儁異な剣士と聞いている。エブヴィスの襲撃の報復で攻めにきたのか。然し、今回の襲撃、我々の関与はない。」

「ああ、承知している。だが、我々はここに戦いにきた。」

「了解した。」

 彼は馬から降り剣を抜いた。私も馬から降り、太陽の聖剣を抜いた。

 栄光の為に。 

 彼は大剣を振り回し私に近づいた。そして私にこう言った。

「其方は先程虚偽を吐いたな?その剣はゲルシルヌ家のものだな?確か西ストビアンとの戦で紛失してしまったと聞いたが。」

「いつまで話している。それ以上無駄口叩けばその舌掻っ切るぞ。」 

 すると彼は剣を回すのをやめ、両手で剣を振り上げた。私は右手に剣をもち、互いに衝突した。私は上から剣を振り翳した。すると彼は横に避け私に剣を突き刺そうとした。私は屈んでその剣を避けた。私は剣を取り、横に振り、足を狙った。彼はそれを騰驤して避けた。私はその振り回しの反動を地面に叩きつけ、起き上がった。そのとき、彼は前転をし、ナイフを喉目掛けて刺しにきた。私はプレートアーマーでナイフを止め、大剣を振った。彼はそれに気付き私の剣を剣で受け止めた。

「我が国の蹈鞴場で作られた鉄はケンゲの鈍を折るだろう。」

「お前の目は腐っているのか。不憫なことよ。」

 すると彼は何かを察したらしく、剣を引こうとしたが私はその前にやつの剣を折った。

「我が剣は400年前、我が父ジョネストによって鋳造され、先祖代々受け継がれてきた聖剣だ。だが、握る者は暫く居なくなるがな。」

「そうか。それは、最高純度の鉄だろうと、紙を切る如しということか。だが、その剣も火焔の技術の前に無力。」

 私は奴の首を斬り落とすつもりだったが、私はすぐさま愛鹿にのり、彼から離れた。

「爆撃!爆撃!敵は火焔の技術を復活させた!直ちに爆撃開始!敬虔な騎士達よ!ランスを構え地に降りよ!爆撃が終わり次第突撃だ!」

 敵は火焔技術(可燃液体を燃やし肉体を焼き尽くす兵器。ジョネストにより作られ、各地に伝えられ、忘れられていた旧基本技術。可燃液体は車の燃料として使用できる可能性が高い。)を持っている。これを教皇に伝えれば、処刑は免れられる。だからこそ、我々はここで勝つ。

 数名のフィリウルテルを含む騎士たちが鹿に乗り降りてきた。

「爆撃準備完了しました。ご指示を。」

「直ちにというのが聞こえなかったのか?まぁよい。爆撃ーーーーーー‼」

 飛行船から一斉に爆薬樽が落とされた。

「退避ー退避ー。一時退避し城に入れー。」

 ゼウンタリアは叫んだ。敵は城に逃げたがゼウンタリア含む多くのものが崩れた壁の下敷きとなった。暫くの静寂の後、炎の音がした。

「遂にお出ましだ。火焔技術火炎大砲の。」

「どうします。もう一度爆撃しますか。」

「そうだな。」

 その瞬間、飛行船三機の内一機に火炎放射が当たり爆発四散した。

「高度を上げろと伝えろ。そして数百名は降りてこいとも。はぁ我らが破壊したもののせいで我らの行く手が阻まれるとは皮肉なことよ。」

 直ぐに信号が送られ飛行船は上昇し、数百名の騎士が降りてきた。

「いいな。我が騎兵部隊は散開しながらも一定距離を保ち突撃する。」

 鹿はこのような石など直ぐに飛び越える。敵は安心しているだろう。私は剣を振り上げ突撃命令を出した。ここにいるのは全ての騎士が精鋭である。そのため我々は今回右手にランスを持ち左手で毒ナイフを投擲した。多くの敵兵は射程の長い毒ナイフに刺され死んだ。大砲は先程の砲撃で暫く打てず敵はナイフでほぼ全て掃討した。我々は残りの兵にランスで突撃した。すると彼らは火炎放射器を使い、一瞬で肉を炭とした。素晴らしい威力だ。

「待て。騎士達よ。そして逆軍共ら。聞け。我々の勝利は確実である。丐命せよ。そしてその命を無駄にするな。我々の下僕となり我々に技術を伝えよ。今回のお前らの敗北要因は固執だ。火焔技術をへの依存だ。我々は適切な判断をし使用する。それとも親族を連れてきてお前らの前で拷問をしようか?大丈夫だ。お前らには何もしない。技術をつたえるとき支障のないようにな。どうだ。不満か?勿論、味方につくならお前らの家族そしてお前の生活を保証しよう。」

「断わる。」

「ふーむ。そうか。ハッタリは効かぬか。ではお前らの国より良い待遇をしてやろう。我々の町に住まわす。もし嫌ならばそこに残ればいい。賛成するなら、武器を置き、ここへ来い。」

しかし誰一人として動こうとするものはいなかった。

 ふむ。どうやら此奴らは。

 私は角笛を吹いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る