第一章 最終話 君は美しい

 湖の中に降りていく。死を感じる水の冷たさと深さ。

 そんな中、ルヴナンは一つの事だけを思っていた。

「僕は、ピヨが見たい……」

 蛇に攻撃を仕掛け、勇敢に立ち向かったピヨの殻は割れた。

「ピヨはどんな子なのだろう。僕を助けてくれたピヨ。勇敢な小さなたまごの戦士」

 卵の中でルヴナンは呟く。

「生まれるんだ……! ピヨと僕が出会うために……!」

 ルヴナンの心に決意が生まれていた。

 勇気を持って殻を突っつく。

 ピキッピシッ…!


 ルヴナンは泉の水の中に飛び出した。

 眩しい光が上から差し込み、黄色い雛の姿がこちらに目をつぶりながら潜ってくる。

 ルヴナンにはわかった。

 ピヨだーー!


 水面に二匹の雛が顔を出した。

 空は青! 雲はもくもくと白く流れ、太陽はまぶしく黄金に照らしていた。


 ピヨを見て、ルヴナンは涙した。

「やっと会えた……」

 泉の水面で二匹の雛が手を取り合っていた。

 一匹は黄色いひよこ、もう一匹は美しい白いカグーの雛だった。

「世界と君は、こんなに美しかったんだね。ピヨ」

「お誕生日おめでとう。ルヴナン」

 ピヨが祝福の声をかける。

「ああ、生まれてきてくれて、ありがとう。ピヨ」

 色、音、歌、そして命。

 生まれて初めて感じる世界の美しさの中で、二人の雛が誕生日を祝ったのである。

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