第22話 いなくなったレアール

「大変だ! レアールがいない」

 飛び起きたルヴナンが聞いた第一声は、ピヨの驚いた声だった。

 ひよこのピヨはそこらじゅうを走り回って、木の影や草はの影を探している。

「ま、まさか、蛇に……!」

 走り回るピヨを捕まえて、そっと自身の羽の中にルヴナンはピヨを入れる。

「落ち着いて、落ち着いて」

 羽の温かさを伝えるように、ピヨの背を撫でた。

 ピヨは息を整えて、嘴をぴよぴよ言わせながら、ルヴナンに訴え掛けた。

「もう一度目を覚ましたら、あの断崖にはいなくて……いつも朝になったら、先に起きて夢をからかってくるのに」

 ルヴナンはピヨを庇う様に傍に寄せると、周囲を見渡した。

 昨日はピヨと二人で初めて見る森の木々や、山の大きさに感動してレアールの事を見てやれなかった。そもそも、レアールの存在が、外からからかってくる第三者として居座っていたのもある。彼は、ルヴナンにとってお客さんだった。

「本当にいない。あの朝の後、出かけたんだ」

 ピヨがハッとしてルヴナンの方を見る。

「もしかして、僕が朝日を見ていたのを、気にして……!」

 ピヨが気が付いたのに、ルヴナンも察し始めていた。生まれ出でた二人とは違って、レアールはたまごのままだ。彼は劣等感を抱えて出て行ってしまったのだ。

「しまった。追いかけるか、どうしようか……」

「追いかけよう! ルヴナン!」

 しっかり大地に脚をつけて、ピヨはルヴナンに言った。

 ピヨのはっきりした言葉に、ルヴナンは頷いた。ピヨは今までのピヨじゃない。あの殻を破り、勇気をもったピヨ。もう、ルヴナンが心配する気弱なピヨではなかった。

「知恵を貸すよ、ピヨ。レアールの場所を突き止めるんだ」

 ピヨの決心に、ルヴナンはサポートに回ることに決めた。あの誕生日から、ピヨを追いかけるのはルヴナンの方になったのだ。

 ピヨはたまごの転がった痕跡を探しに走り出した。その後ろをルヴナンが追う。

 勇ましい二人の、4つの足跡が後ろに続いていくのであった。

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