第11話 ゼロ
グレイブVSレイ。
歓声の中、にらみ合いが続いていた。
いつもなら、レイは自分から攻撃を仕掛けない。相手の攻撃に対して対処して、情報収集。そしてカウンターを合わせていくのがレイの戦い方。
だけれど、今回の戦いは違うようだった。
レイは無造作にグレイブに歩み寄る。そして、そのままグレイブの顔めがけて蹴りを放った。
「ほう……」グレイブはその蹴りをスウェーでかわして、「なかなか鋭い蹴りだが……無駄な動きが多いな」
「そうだね」レイは足を上げたまま、「そっちのほうが、盛り上がるでしょ?」
「なるほど……あくまでも売名目的か」だから派手な攻撃を繰り出す。「その傲慢、高くつくぞ」
言って、グレイブは剣を一直線に振り下ろす。
明らかに威嚇の一撃。それだけでも殺傷能力の誇示と、実力の証明には十分だった。
「わぁ……」紙一重でかわしてみせたレイは、「すごいね。どれくらい修行したの?」
「20年だ」喋りながらも、グレイブは隙を見せない。「まぁ……本格的な修行は10年だが……」
「10年前になにかあったの?」
「リャフトさんにやられたんだよ」女神の末裔の1人。「そこで俺は己の未熟さに気づき、本格的な修行を開始した」
「へぇ……」
派手に戦闘をしながらも、情報収集は欠かさないレイだった。
「キミはどうだ?」
「……?」
「キミはどれくらいの期間、修行した? なんのために力を求めた?」
「……」レイは自分の情報を引き出されるのは苦手だが、自分の情報を開示すれば交渉に有利になることも知っている。「そうだね……一応10年修行してる。本気でやり始めたのは2年前だけど」
「ほう……なにかあったのか?」
「守りたい人を見つけた」
「そうか……」意外にも気に入られた返答だったらしい。「悪くない理由だ。愛するものを守るため……力を求める理由としては十分すぎる」
「ありがとう」
男同士で通じ合っているらしい。
なんにせよ、戦いが再開される。
少しずつ、お互いが全力に近づいていく。最初はお互いに様子見をしていたが、途中から会話をする余裕もなくなっていく。
ハイレベルな攻防に、観客も沸き立っていく。突如現れた乱入者の実力に驚き、そして歓声をあげる。
そうして激しい戦いが続いて、やがてお互いの呼吸が乱れていく。
「驚いたな……」グレイブが肩で息をしながら、「キミは何者だ? どうして今まで、キミのことを俺は知らなかった?」
「つい最近、この世界に来たばかりだからね」
「世界……? ああ、外国からの旅行者か?」
「……そういうことにしとこうかな」
説明が面倒らしい。
「とにかく……名前を聞いておこう。キミはなんという名前なんだ?」
「レイ」名字を名乗る必要性は感じなかったようだ。「これから何でも屋を始める予定だから、よろしくね」
「そうか……暇があれば依頼させてもらおう」ありがたいことに顧客が生まれた。「なんという名前の店なんだ?」
「え……? ああ……考えてなかったけど……」お店の経営は任されているし、名前もこちらがつけていいだろう。「じゃあ……ゼロ……そうだね。ゼロにする」
ゼロ……名前がレイだからか。
まぁ名前なんか
「ゼロ、か……覚えておこう」
「ありがとう。ついでに宣伝してくれると嬉しいな」
「それはできないな。俺にも立場というものがある」
「それは失礼」
騎士団長が1つの店を応援するのは難しいものがあるんだろうな。その辺の立場というものは、
「さてレイ……」グレイブは威圧感を強めて、「そろそろ本気になったらどうだ?」
「……」手抜きを見抜かれて、レイも雰囲気を変える。「そうだね……じゃあ、お互い本気ってことで」
「そうだな……少し予定より訓練が長引いてしまっているからな。これで終わりにしよう」
お互いがギアを入れ替える。その一撃で決着をつける、という雰囲気が伝わってきた。
その雰囲気を感じ取って、ギャラリーも静まり返る。誰かのツバを飲む音さえ聞こえてきそうな……そんな沈黙だった。
そして、レイの汗が地面に一滴落ちる。
それを合図に2人は弾かれたように動き始めた。
グレイブが刀を振り上げる。しかしそれはおとり。本命の右の蹴りが、
「なに……?」
グレイブが予想外とばかりにつぶやく。
そう。グレイブの右の蹴りはレイに直撃した。
そしてそのままレイは「うわ」と芝居がかった声を出して、地面に蹴り飛ばされた。
観客は大盛りあがりだった。突如現れた謎の乱入者と勇敢に戦い、そして勝利するグレイブの姿。そんな姿は、多くの人の心を引き付けただろう。
まぁ……言うなら……
レイの計画通りの展開なのだろう。
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