第12話

「ふぅ………」


 その後、盛り上がりに盛り上がりまくったヒロイン大運動会。エキシビション後に俺が他校のヒロインに囲まれまくったというちょっとしたアクシデントがあったものの、我々瑠璃学園は────


「………改めるとやりすぎじゃね……?」


 ────ちょっと他校が可哀想に思えるくらいに大差をつけて勝利した。改めなくてもやりすぎである。気のせいか高松さんの目が死んでたように見えるし。


 と、まぁそんなことがありつつヒロイン大運動会は幕は降り、我々は明日になれば瑠璃学園へ帰ることになる。


 誤算ではあったが、親友の二人が生きており、ちょっとだけでも姿が見れたことは単純に嬉しかった。


 ボケー、と人が寄り付かない屋上で月をみあげる。


「………ん?」


 微かに、階段を登る足音が聞こえた。急いでボイスチェンジャーの電源をONにして、軽く声を出して調声。瑠璃の生徒ならそんなことをしなくてもいいが、この気配は────


「やはり、ここにいましたね。悠奈さん」


「こんばんは、高松さん」


 ────何かとここで出会うことの多かった高松さんである。


「お隣、よろしいですか?」


「えぇ」


 真ん中に座っていたので人一人分横にずれてから座り直す。すると、腕が触れる近さに彼女が座ってくる。それに?を浮かべながらも、特段注意することは無かった。


 だからこそ────


「……やはり、ですね。小鳥遊さん……どうして、男性ですのにジャガーノートを?」


「────!!??!」


 ────バレた。それはもう、呆気ないほどに。


「えっ!?はっ!?なっ……!?」


 ここで誤魔化せればよかったのだが、突如として正体バレしたので脳が正常に稼働しない。そんな俺をクスクスと高松さんが笑いながら見る。


「私、昔から色々とお父様やお母様から仕込まれまして。例えば読唇術」


 トントン、と自身の唇を叩く高松さん。


「違和感を覚えたのは小鳥遊さんが必死にあのメカアビスの攻撃を回避してた時でした。口調からは考えられないほどに」


「…………………」


 思わず手で顔を覆ってしまった。いや、でもあの攻防をしながら口調も取り繕えというのも無理な話でして……アロンダイトがあったらぁ……!


「それに、ところどころ見える強引さ。一見違和感はありませんが、注視するとあまりにも女性らしくありません………そして、今こうして軽く触れ合って分かりました」


「………………………………」


 やっばい。流石は瑠璃にまで名前を轟かせているヒロインだ。防御主体ということから、観察眼は超一流だ。


「………誤解されてるようですが、私は貴方の正体を知ったからといって、どうこうするつもりはありません」


「え……………?」


 はて、一体どういうことだろうか。


「男性ですのに、ジャガーノートを使えるだなんて十中八九、フェンリル絡みでしょう?」


「んー…………」


 いやぁそれはまだ何ともハッキリとは言えないけどな……。まぁバレたものは仕方ないとして、俺の境遇を高松さんに伝えることにした。


 一度、俺は死んでいること。俺の体にはアビスが寄生していること。そのアビスが、魔力を俺の体に流して無理くり身体機能を維持していること。


「まぁ、そんな不思議なことが」


「不思議……うん、確かに不思議だよな」


 人類の敵であるはずのアビスが、人の身体に宿り、特に悪さをせずに俺の体を生かす為だけに存在する。普通に考えたらありえない話である。


「あの、小鳥遊さん。お願いがあります」


「ん?」


「別れる前に、貴方のお名前と────本当の声、お聞かせくださいませんか?」


「ん……まぁそれくらいなら」


 ボイスチェンジャーの電源を切る。


「あー……俺の名前は小鳥遊祐樹。改めて、これからよろしくな、高松さん」












「不甲斐ないな」


「申し訳ありません」


「流石にイレギュラーと雛罌粟の校長相手では仕方ないだろう」


「だが、新しいヒロインの情報を得られなかったのは痛いな」


「ヒロインの情報は今は二の次だ。イレギュラーさえ手に入れば、我々にとってはどうでもいい」


「…………仕方ない、秘密裏に捕獲出来れば良かったが」


「では、第二のプランで?」


「あぁ────イレギュラー、小鳥遊祐樹の情報を世に知らしめろ。何としてでも、あのイレギュラーは、我々が手にする」

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