第2話
「お、俺……これからどうなるんです?」
震える声で月下さんに問う。べ、別に恐怖からではない!ただ……爆発物が首元にあるって普通に怖くね?じゃあ恐怖心じゃん。
「別に、どうもしませんよ?」
「へ?」
スイッチをポケットに戻しながら月下さんがそう言う。
「小鳥遊さんが気絶している間に、色々と検査させてもらいましたので……まぁその結果次第で私の爆破スイッチが火を噴くかどうかが決まりますが」
「スゥー」
俺いつの間に検査されてたんだ。てか、その間に起きなかった俺も俺でやばいな。
「まぁでも、ある程度の裁量は私に委ねられています。検査結果が出るまでの間でしたら、ある程度自由にしてもらっても構いませんよ。勿論、私の監視付きですが」
「え、いいんですか?」
あれ、思ったよりも高待遇。てっきりこれから「起きたからには首の手と足に鎖を嵌めてもらって、壁に貼り付けます」位は言われると思った。
「えぇ。話している限り、貴方は悪い人という印象は受けませんし……何より、何かやらかしたら私が叩き潰してあげます。男のプライドと一緒に」
「ヒェッ」
股間がヒュんってなった。この人絶対今男のプライドって言った瞬間俺の股間見た。怖い。怖すぎるよこの人。
「────と、言うことですので、どこか行きたいとかあるのでしたら、遠慮なく言ってください。勿論、校舎の方は無理ですが」
「えぇ……」
とは言われてもなぁ……急にそう言われても思い浮かばないわけで……あ。
「じゃあ、海。連れて行って貰っていいですか?」
ここで、冒頭に戻るというわけである。別に、俺が海を選んだのは大した理由じゃない。ただ、海でも見てれば、なんか色々とあるかなーって。
ま、特に無くて、あったこととした爆破スイッチチラつかされただけなんですよね!
「……小鳥遊さんは」
「はい?」
二人並んでぼーっと海を眺めていたら、月下先輩に話しかけられた。呼び方が変わっているのはあれだ。無遠慮だと思うが、ここに来る途中に年齢聞いたら、次の四月が来たら高校三年生になるらしい。
普通に、俺が年下なので変えただけである。
「小鳥遊さんは、アビスを憎んでいませんか?」
「は……?」
こちらを見て、真剣な目で見つめる月下先輩。その問いに少しばかり唖然とするが、少し笑いながら首を横に振る。
「あはは、そんなの────クソ憎んでるに決まってるじゃないですか」
「──っ!」
「当たり前じゃないですか。いきなり現れて、いきなり俺の人生終了させて、あまつさえ俺をアビスに変えやがった奴らなんて、憎んでますよ。できるなら、今すぐ俺の手で引き裂いて殺してやりたいですよ」
瞳が揺れる。心から湧き出るように黒い感情がとめどなく溢れでてくる。
でも、今はそんなに気持ちに蓋をする。
これを解放するとしたら、もっと適した場面があるはずだ。
瞳を閉じて、深呼吸をして気持ちをゆっくりと抑え、無意識の内に溢れでていた殺気もしまい込む。
「……すみません。少し、不躾でしたね」
「いえ、あまり気になさらないでください。俺も月下先輩に年齢のこと聞いちゃったので」
顔を伏せ、申し訳なさそうにする月下先輩。しまったな、俺はこういう顔をさせたい訳じゃなかったのに……何か話題を別のに変えなくては。
「あー……そういえば、何ですけど。生徒会長って二年生の頃からやってたんですか?」
「えぇ……まぁそうですね。まぁ、私がワルキューレ────失礼、生徒会長になったのは去年の夏頃ですが」
おっと?まーた何か知らん単語出てきたな?
「夏頃?」
「えぇ、瑠璃学園の生徒会長になるには『学園最強』の二つ名が必要なので」
ふーん?学園最強?学園最強なんだこの人。へー……ん?
「……最強?学園?」
「はい」
「学年ではなく?」
「えぇ。高等部生徒の頂点に立つのが私です」
……………。え?マジ?ということは実質全世界ヒロイン最強の人?
「え?スゴすぎ」
「その割にはあまり驚いているようには見えませんが」
「い、いやいやいや。本当に驚いてますって。なんでそんな人が俺の監視に────あぁ、そんな人だからか」
自分で途中で言って納得した。そりゃこんな暫定MADE IN ABYSSな俺、任せられるとしたら最強位でしょ。
……と、言うことは俺の目の前から一瞬で消えて首トンしたあの子より強いのか。ヒロインの世界は広いなぁ。
「ということなので、安心してボコボコにされて大丈夫ですよ」
「笑顔が眩しいけど、そんな素敵な顔で言うセリフではないと思う」
「まぁ。小鳥遊さんは褒め上手ですね」
「いやいやいや」
褒めてないですが?本当にいい性格をしているなこの人。綺麗な薔薇には刺があるとはまさにこの事だな。例として辞書には月下先輩の名前書いていいと思う。
「ん?」
「おや?」
ピリリリリ、と何処からか端末音が聞こえる。爆破スイッチが入っている方とは別の方のポケットから取り出したのは、ガラパゴスではない方の携帯だった。
スマホじゃないんだ……。
俺が不思議に思いながら見ていると、月下先輩がそれを見せてくれた。
「これは、全ヒロインに支給されている無線機ですよ。通話とメールを確認するだけなら、別にスマホじゃなくても良いので」
「ほへー」
そうなんだー、と思いながら月下先輩の行動を見る。どうやら通話ではなく、メールのようだ。
「小鳥遊さん」
「はい」
「検査の結果が出たそうです。今から学園長室に行きましょうか」
運命が決まる。果たして殺されるのか監禁されるのか。
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一応これドラゴンノベルスのコンテストに応募しているので、かなり駆け足気味に更新していきます。
宜しければ応援の意味を込めて星評価や、応援のハートをよろしくお願いします。
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