いつも、横顔を見ていた

西しまこ

第1話 好きな人の横顔①

 高校に入ってね、あたし、好きな人が出来たの。

 新倉にいくら弘樹ひろきくん。


 日直で、黒板を消さなくちゃいけなかったけれど、あたし背が低いから一番上の方、届かなかったんだ。ぴょんって飛んで消そうとしていたら、「彩香あやか、届かないの?」って声がしたの。

「あ、うん」

「貸して。消してあげる」

 弘樹くんはあたしから黒板消しをとると、さっと消してくれた。しかも、とっても丁寧に。

「あ、ありがとう!」

「どういたしまして」

 弘樹くんはにっこり笑って、黒板消しをチョークのところに置いた。チョークを払う指先がきれいで、見惚れてしまったの。あたし、すごく嬉しかったんだ。そんなことって思うかもしれないけど。



 それ以来、あたしはいつも弘樹くんの横顔を見ていた。


 あたしの席は弘樹くんの斜め後ろで、少し離れているから、横顔が見える位置。「木崎きざき」のあたしは教室の右の後ろの方。「新倉」の弘樹くんは教室の左の前の方。だから、弘樹くんの右の横顔をいつも見ていたんだ。


 授業中は、授業を聴いたり本を読んだり、それから弘樹くんを眺めたりしているんだ。弘樹くんはいつも真面目に授業を聴いていた。すごいなあ、先生の言っていることもメモしているみたい。この間、ノートをちらっと見たら、すごくきれいな字で書いてあった。ノートがきれいな男の子って、なんかいいって思っちゃうよね?


 放課後はね、弘樹くんが部活している姿を、いつもこっそり図書室から見ているの。あたし、部活は入っていなくて放課後は図書室に通っていたんだ。そうしたら、見つけちゃった! 絶好ポイント!

 弘樹くんは陸上部だって、分かった。すごーい、走るの速い! かっこいい! あ、幅跳びもしている!

 いいなあ、運動出来て。あたし、運動は苦手なんだよね。弘樹くん、かっこいい。


 放課後、図書室で弘樹くんを見ることが楽しみの一つとなった。 

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