第10話 温泉と美少女

 千尋峡谷にて、温泉を発見した。

 飲み水の確保ができて、俺の千尋峡谷ライフもすごしやすくなった。




 ミーシャから温泉の場所を教えてもらって、数日経った。

 この数日間、俺のそばに餌の子羊は出現しなかった。

 大気中の魔素で飢えをしのげる俺だが、とりあえずの水分確保はしたくなる。


 俺は温泉に続く建物跡の周囲で、辺りの確認をする。

 近くにドラゴンの気配はない。

 当然ミーシャの気配もない。


 俺は建物内に入り、温泉を目指す。

 そして気づく。

 奥に、気配を感じる。

 その気配はミーシャに似ているが、ミーシャを数段弱めた感じがする。

 これくらいの相手なら、俺でも対処は可能だろうと、俺は奥へと進む。


「誰?」

 温泉に浸かってた、その気配の持ち主も俺に気づく。

 それはなんと、人間の女の子だった。

 立ち上がって身構える彼女の胸元と股間の辺りに、不自然に湯気がかかる。


 うまそうな餌を見つけた訳だが、人間だった前世の記憶がある俺は、この餌を食べる気には、なれなかった。

 俺は女の子には構わず、お湯を飲む事にした。


「ふん!」

 そんな俺に、女の子がアッパーカット。

「ぐはっ。」

 俺は吹っ飛ばされる。ドラゴンの俺が、人間の女の子に。


「ここに来たら殺すって、言っておいたよね、サム!」

 女の子は腕組みして仁王立ち。

 その胸元と股間には、不自然な湯気がかかる。


「え?おまえ、ミーシャか?」

 さっきまでミーシャを弱くした様な感じだった、彼女の気配。

 その気配が今は、ミーシャそのものに感じる。


「だったら何?言っとくけど、このままでもあんたを殺せるわよ。」

 女の子はニヤける。

 それを見て、俺は悟る。

 こいつの言ってる事は、事実だ。

 ミーシャがなぜ人間の女の子のままなのか、そこは分からない。

 だけど背中を見せて逃げだせば、俺は確実に殺される。


「わ、悪かったよ。お、俺はただ、水を飲みたかっただけだよ。」

「え?」

 俺の弁明に、女の子はなぜか顔を赤くする。

「な、何考えてんのよ、この変態!」

 女の子はなぜか怒りだす。


「何って、ここんとこ餌にありつけなかったから、水分補給だけでもって。」

「はあ、あんたに教えるんじゃなかったわ。」

 俺の度重なる弁明に、女の子はため息をつく。


「そ、それよりミーシャ。おまえ、人間に変化できたんだな。」

 女の子の怒気も少し落ち着いたので、俺は話題を変えてみる。

「だったら何?私を食べる気?」

 女の子の怒気は、少し高まる。


「あ、いや、なんでここに留まるのか、気になって。」

 人間だった記憶のある俺は、女の子を食べる気にはなれない。


「そんな事、あんたには関係ないでしょ。」

「で、でも、俺は人間になれないから。ど、どうやってなるのか、お、教えてくれよ。」

「教えるって。今の私を見ても分からないなら、あんたは一生人間になれないわよ。」

「え?」


 女の子の言葉に、俺は少し考える。

 言われてみれば、最初に感じた女の子の気配は、ミーシャの気配を丸くしたような、かどがとれたような気がした。

 ならば、俺自身の気配も、そのようにすればいいのか?


 俺は目を閉じて、意識を集中する。

 自分の意識を落ち着かせるように。


 しばらくして、目を開ける。

 そこには、絶世の美少女が立っていた。


 さっきまでは、人間の女の子としか認識できなかった。

 でも今は、普通に美少女だと認識できる。

 という事は、俺もドラゴンから人間に、種族チェンジできたのだろう。


 目の前にいるのは、胸元と股間に不自然な湯気がかかってる、素っ裸な美少女。


「ちょ、ちょっとあんた。何考えてんのよ。」

 美少女の視線が、俺の股間に釘付けになる。


 俺の股間にも不自然な湯気がかかってるが、こんな美少女の裸を目の前にしたら、どうなるかは言わずもがな!

 そして、前世の俺が死ぬまで妄想していた事が、今なら実現可能!

 美少女が怯えた声をだした事で、俺は自分の理性に歯止めが効かなくなる!


「ふん!」

 美少女に襲いかかった俺だが、逆に殴り飛ばされた。


「あ、ん、た、ねぇ。」

 美少女は、わなわな震えだす。

 そしてその姿を、徐々に変えていく。


 そうだった。

 この美少女はミーシャだった。

 恐怖を思い出して俺の股間も、縮こまる。

 俺は逃げだす。


 ミーシャがずっと人間のままだった事が、今になって分かる。

 ドラゴンに戻るのに、時間がかかるからだ。

 その間ミーシャは、無防備になる。

 今はその時間を利用して、少しでも遠くへ逃げないと!


「待ちなさい!」

 ドラゴンに戻ったミーシャが、俺を追ってくる!

「ひい!」

 ぶざまに逃げる俺は、いつの間にかドラゴンに戻ってた!

 建物跡の外まで逃げたが、ミーシャは空を飛べる。

 追いつかれるのも、時間の問題だ!

 と思ってたら、俺も空を飛んでいた!


 空を飛ぶのは、翼を物理法則で動かす事ではなかった!

 人間に変化する時のように、全身を流れる気力を変化させる事で、可能になる!

 空を飛べない人間でも、夢の中なら飛ぶ事が出来る。

 それと同じだ!



後書き

ども(・ω・)ノ

ついにやってきた、みんな大好き温泉回♪ヽ(´▽`)/

実はミーシャは、人間になれるのでしたー♪

描写は少なめな分、妄想の余地がありますんで、存分に妄想してください♪


ミーシャは変化するのに時間がかかる。

対して主人公は、即時変化できる。

この違いは、今後クローズアップされるんで、乞うご期待です。

(・∀・)

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