第37話狂気と洞窟と興奮

スコリーに依頼をしてから3日後、必要な素材があると言う事で、それを取りに俺、スコリー、エリス様3人で学校をサボって、ゲーム産では無い歴とした鉱石系の魔物が出るらしい洞窟方のダンジョンにやって来ていた。


「あ、あの……アクト様?どうして私今日ここに呼ばれたんですか?」

「ごめんねエリス様。このだねだねうるさい幼女が、素材集めにどうしてもエリス様を連れて来いってうるさくてね」

「僕は幼女じゃ無いんだね!」

「でも本当に大丈夫なんですか?前みたいにこの方もおかしくなっちゃは無いですか?」

「さぁ?どうだろ……でも一応事前に説明はしてるし大丈夫じゃ無い?本人も自信満々だし」

「僕は天才魔科学者だから何が来ようとも、もんまんたいだね」


そのあまりの自信に俺は何かしらの装置を用意して来ているのだと思い、エリス様に目配せをしてそれを確認したエリス様は魔物創造を行った結果……


「全然ダメじゃねぇか!」


今回は黄衣の王では無く、こっちの世界にはスライムもいる事だし、見慣れた感じで大丈夫だろうとショゴスモチーフの魔物をエリス様に作り出してもらった結果、スコリーはショゴスを見た瞬間大声を上げたかと思うと、いきなりそこら辺に落ちている石や砂などを食べ始めた。


「これ、そんなダメかな?ちょっと怖いスライムみたいで大丈夫だと思ったんだけどな……」


俺はそう呟きながら砂や石を食べるスコリーを押さえ付けて、水魔法を容赦なく口の中に突っ込んで口内の洗浄のついでに正気を呼び戻させた。

その間エリス様はショゴスもどきに乗っかって遊んでいた。


「それで?スコリーお前どこが大丈夫だったんだ?俺てっきりお前があんなに自信満々だったから、なんかそう言うのを防げるアイテムやら装置を持って来てると思ってたんだけど?」

「そんなものは無いんだね。けど何と無くいけるとは思ってたんだね」

「あっそ……」

「あっそは流石に酷いと思うんだよ!」


そうして俺とスコリーとエリス様に加えてショゴスもどきがパーティーに加わり、何度かスコリーが発狂しかけてそれを俺が発狂キャンセルを繰り返しながらダンジョんを進み、途中遭遇した魔物もショゴスもどきが足止めをして、それを俺が背後から速射レーザーで蜂の巣にするを繰り返した。


そしてお目当ての鉱石が採取出来る魔物の生息地へとやって来た。


「こんなに簡単に来れていいのかね?」

「ん?ダメなのか?俺達結構ダンジョンは攻略してるけど、フルメンバーならもっとサクサク進むぞ?ですよねエリス様?」

「う、うん。私も攻略する時は別の子で攻略してるから」


そう言ってエリス様はショゴスもどきの頭?を優しく撫でた。


「それで?ここで俺達は何をすればいいんだ?魔物の殺戮でもすればいいのか?」

「や、辞めるんだね!君達2人と1匹は待っといて欲しいんだね!」


そう言うとスコリーは担いで来ていたリュックの中から、ハンマーとタガネを取り出すと背中に煌びやかな宝石が生成された岩を担ぐ、ヤドカリの様な魔物へと近づくと、その魔物を刺激しない様に慎重に背中に生えている宝石を、ハンマーとタガネを使っていくつか回収した。


「へーあんな風にして鉱石を回収するんだな。もし俺だけで来てたら絶対無理矢理力任せにとるか、あの魔物ごと持って帰ってたわ」

「スコリー様でしたっけ?凄いですねあの方」

「だな……」


丁寧に魔物にストレスを与えない様にしているスコリーの姿を見て、いつもの自分達の脳筋っぷりを振り返って俺とエリス様はスコリーを今日初めて尊敬の目で見た。


「おーい君達!目的の鉱石は回収出来たんだよ!……って何でニヤニヤしながらこっちを見るんだね?」

「いや〜スコリーは10歳なのに凄いなって思ってな」

「そうですね。スコリー様は私達に出来ない事が出来て凄いです!」

「そんなに褒められると何だか照れるんだよ!」


そう言ってスコリーがくねくねと体をくねらせながら照れていると、その衝撃でリュックに付いていた液体の入った瓶が床に音を立てて落ちた。


「おいスコリー何か落ちたぞ?」

「え、エヘヘ……どうかしたんだね?」


ヨイショされて上機嫌になったスコリーが、そう言って振り返ってその液体を見て、先程まで照れているせいか少し赤かった顔色が一瞬で真っ青に代わった。


「お、おいスコリー本当にお前何を落としたんだ?」

「あ、えっと怒らないかね?」

「ああ、怒らないから教えてくれる」

「……剤」

「なんて?」

「…奮剤」

「すまん、何かの足音のせいでうまく聞き取れないんだ」

「落としたのは、魔物用の興奮剤だね!」


そうスコリーが叫んだ次の瞬間、大量の興奮した魔物が俺達目掛けて襲いかかって来た。


「お前ら!逃げろぉぉぉぉ!!!」


俺のその掛け声と共に俺達は来た道を全力で引き返した。

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