プライベートダンジョン
じゃがバター
第0話 世界
世界にダンジョンが出現して半世紀。
人の目の届かない山奥、人の手の届かない深海、人知れず生まれたダンジョンからは魔物が溢れ、まず海と空で分断が起こった。
溢れた魔物の多くは、棲み処であるダンジョンから――ダンジョンコアから長く離れることができないが、リトルコアと呼ばれる特殊な個体はその限りではなく、またリトルコアを中心として他の魔物も移動することができる。
リトルコアはダンジョンの区切りのいい階層ごとに現れる、他より強い個体。ゲームでいうところのボスにあたる。それらがダンジョンコアの小さなものをその身に宿しているが故、リトルコアだ。
リトルコアの強さが、一緒に溢れ出る魔物の数と質を決める。
ダンジョン内では電子機器が機能せず、銃火器も使えない。リトルコアの周りでも同じ現象が起こる。溢れた魔物も電気やガソリンなどで動いている機械の類を、優先的に破壊する傾向にあった。溢れ出した魔物による、度重なる襲撃に加え、海に溢れる魔物の存在が輸出入を困難にし、一時は文明の衰退も懸念された。
それも魔物がドロップする魔石から、動力を得る機巧が発明されるとある程度は落ち着いた。まだ大きな動力を得るには至っていないが、個人宅の照明や冷蔵庫を稼働させるには十分足りている。
研究により、ダンジョン十層に現れるリトルコアを五年内に倒さねば、魔物が外に溢れ出るか、ダンジョンが消えるか、どちらかが起こることが判明した。ダンジョンの魔物がさまざまな資源をもたらすことも。
そうして人類は未踏の世界へ踏み出し、冒険と資源を求めて今もダンジョンの探求を続けている。
ダンジョンに初めて足を踏み入れた時、人は『運命の選択』をする。本人にしか見えない無数の光から、運命の一つを選び取りダンジョンでの姿と称号を手にいれる。
姿は、偉丈夫に、老人に、幼女に、異種族に。姿も年齢も性別、種族さえ変わる。
称号は、人にダンジョンを進むための能力を開花させる。能力とは力や速さなど身体的なもの、火や水といった【属性】、あるいは魔法などの【スキル】であり、ダンジョンでの姿でしか発動しない。
また、武器と防具が一つずつ与えられる。称号と共に与えられた能力、武器防具に宿る能力は、後から得た能力と違い、変異しやすく成長も早いため、その人のダンジョンでの運命を決めると言われる。
そして、今日も人々は、ダンジョンをゆく――
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