ふと気が付いたら芋虫でした~人智之蟲は人間の夢を見るか~

かわくや

最悪の目覚め

 これはいったいいつからなのだろう。


 ふと意識すると、トクン トクンという振動が身体全体を優しく揺らしていることに気が付いた。


 つい、むず痒くなって身体を捩ると、額にブヨブヨとした感触。これは………壁だろうか。

 こんな真っ暗闇の中でもここだけ薄く光っているあたり、ここだけが大分薄いのだろう。


 これなら……うん、破れそうだ。


 不思議と、そんな確信を得ると同時に、そうしなければいけない気がした。


 そんな確信に導かれるまま、力を入れて踏ん張る。


 ふぬぬぬぬぬぬ!


 おぉぉぉぉぉぉ!!


 ふぉぉぉぉぉぉ!!!



 ズリュッ


 おお!やっtギャッ!!


 そんなやけに生々しい音を立てて壁が破れると同時に目を焼き潰さんばかりの目映い光が辺りに満ち溢れた。


 ま、眩し、何だ?てか何処だここ。


 そう思い、咄嗟に手で目を押さえようとしてふと気付いた。


 あ、あれ?何だこの感覚。

 なんか手が短いというか、手が多いというか……


 その違和感を解決すべく右手を上げ下げしていると、突然ガクンと姿勢が崩れた。


 うわッ!

 な、何でだ?足は動かしてないのに。

  と、取り敢えず起きねば。


 そう思い、左手で踏ん張って起き上がろうとしたのだが………


 グエッ


 相も変わらず目は潰れて見えないものの、体感的に身体が一回転した気がした。


 ほ、ホントにどーなってんだこれッ!何で踏ん張っただけで………ってうわッ


 しかもその回転は一回だけには留まらず………



グルン  グルン  グルン グルグルグルグル……



 こっ、コレ加速してねぇか!?

 うぉ……うぉっ!止めて!!誰か止めッ____ 


 そう無様に叫んでいると、不意に足元の感触が消え、俺は一つの事実を悟った。





 あ、俺。落ちたな。





「____________」





 声にならない声を上げながら

 落ちる。落ちる。落ちる。




 そして落ちて___落ちて___落ちた先で………



 ベシャ



 俺に纏わりついていた粘性の液体と共にようやく地に足着けることが出来た。


 実に不思議なことに身体に痛みは無い。

 いっしょに落ちて来た液体がクッションになってくれたのだろうか。


 逆を言えば、この液体が無ければ、俺は死んでたってことだ。

 うーん、果たしてこれは俺の幸運に感謝すべきか、液体に感謝すべきか。


 そんな毒にも薬にもならない様なことを考えていると、徐々にブレていた輪郭が定まって来た。


 そうして、ようやっと見えた景色は………


 は?


 そこは見たことも無いような巨大な森だった。


 え?……は?一体全体ドユコト?


 慌てて辺りを見渡すも、視界が届く限りに広がる辺り一面の、森。森。森。

 そこまでならまだ分かるのだ。

 ただ、問題なのはその規格外のデカさだ。

 流石に俺が葉っぱ一枚の上に乗れる様なサイズの森なんて知らねぇぞ?

 一体どーなってんだここは。


 そう思い、後ろも見ようと顔を後ろへ向けると…………


 あれ?なんだこれ。


 ふと、とあるものが目に入った。


 緑の太い身体に、その身体を支える何本もの足。

 一般的に芋虫と呼ばれる様な特徴を持ったそれが俺の後ろに続いていたのだ。


 ?なんで芋虫がこんなところに……ってちょっと待て。


 少し前に進んで、芋虫の全体像をみようとした所で俺は思わず静止した。


 ……俺の見間違いか?

 さっき進もうとしたら芋虫の身体も進んで来たんだけど。


 …………試してみるか。


 俺は身体を左右に軽く揺する。 後ろの芋虫の身体も慣性に従い左右に揺れた。



 ………どーすんだよ、これもう言い逃れ出来ねぇじゃねぇか。


 どうやら俺は………芋虫に転生したらしい。

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