第456話 それぞれの役目
レボルの言葉を聞いた冨岡は、彼が自分と同じ気持ちでいてくれるのだと感じた。
この学園を守るべき場所だと言ってくれている。そうであれば、止めるのは筋違いなのかもしれない。
彼の覚悟を受け止めるべきだ。自分はどれだけ止められても動くつもりなのだから。
そう考えた冨岡は、まっすぐレボルの目を見る。
「その言葉に甘えてもいいですか?」
「私がしたくてしていることです。トミオカさん、自分のすべきことを忘れないでください。何をしてでも、守らなければならないものがある。そうなれば利用できるものは全て利用しましょう」
言いながらレボルは、頼り甲斐のある笑みを浮かべた。もはや彼は冨岡にとって、かけがえのない存在である。
大切な者の一人だ。
「レボルさん。あなたも俺にとって守りたい大切な人ですよ」
「そっくりその言葉をお返ししますよ。さて、ともかく私は情報収集に行ってきます。冒険ギルドに行けば何かわかるかもしれません」
そのまま離れようとするレボル。
冨岡は彼の背中を呼び止めた。
「レボルさん、ちょっと待ってください」
「どうしたんですか?」
「冒険者ギルドに行くなら、俺の名前を出してみてください。ノノノカ・ベルソードに話があると言えば、協力してくれると思います。多分、俺の周囲は調べているはずですし、レボルさんのことも知っているはずですから」
レボルは冨岡の口から出てきた名前に驚き、一瞬硬直する。信じられないという表情だ。
「ベルソード・・・・・・って、あのベルソードですか? 一体どうしてトミオカさんが・・・・・・いや、今は詳しく聞いている場合じゃないですよね。わかりました、そうしてみます」
そうしてレボルは冒険者ギルドに向かって行く。それに続き、ドロフとメレブが何かを言いたそうに冨岡の前に立った。
「ドロフ、メレブ」
「兄貴、俺にも何かやれることはないすか」
口下手なメレブの分まで、ドロフが問いかける。
この二人は冨岡がいなければ、未だ自分の人生を呪い、誰かを傷つけることを厭わず、様々な恨みを買いながら生きていただろう。それ以外に生き方を知らず、家族を守る方法もない。
だが、今は違う。真っ当に生きる喜びと幸せを知ったのだ。
冨岡を守ることは、自分自身を守ることである。冨岡が動くと決めたのなら、自分たちも。その思いは強い。
二人の気持ちを察した冨岡は、不安そうにアメリアの足元にいるフィーネとリオを見ながら言う。
「ドロフとメレブは、ここでアメリアさんたちを守ってくれるか? 今のところベレゼッセス侯爵は手を出してこないはずだ。けどそれは、絶対じゃない。でもな、俺たちは絶対にこの場所と子供たち、アメリアさんを守らなきゃならないんだ。任せてもいいか?」
「もちろんです! 命に変えても、必ず!」
「ありがとう、ドロフ、メレブ。でも、自分たちの命も大切にしてくれ。余計な争いを避けるためなら、金はいくらでも払っていい。金の場所はアメリアさんが知っているから、よろしく頼む」
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