第68話 超進歩
想像以上に驚いてくれたことで満足げに頷く冨岡。さながら後方彼氏ヅラである。屋台を褒められると、自分のことのように嬉しい。
何より、アメリアとフィーネが驚き、喜んでくれて大満足である。
全ては百億円を持っている冨岡だからできたこと。
「この白は清潔感を感じさせつつ、目を引くでしょう。さーらーに! この白を継続させるための洗浄液も購入済み! そして、防水加工も施してあるために、雨の中でも浸水してくることはありません!」
まるで通信販売でもするかのように、声色を高くして紹介する冨岡。
そんな冨岡に微笑みを向けながらアメリアは問いかける。
「もしよろしければ、中も見せていただけませんか?」
「どうぞどうぞ、こちらです。ほら、フィーネちゃんもおいで」
身長が届かないカウンターから中を覗き込もうとしているフィーネにも声をかけ、冨岡は屋台の後側に向かった。
ここで屋台の外をわかりやすく解説しよう。屋台の前側はリヤカーのように人が牽く持ち手がついている。右側にはカウンターとハンバーガーのイラスト、左側にはさらに大きなハンバーガーのイラストと通気口がついていた。
そして今、冨岡がアメリアとフィーネを連れて来た裏側には中に入るためのドアがある。
一段のステップがついているのでフィーネでも簡単に乗り込むことが可能だ。それも冨岡のこだわりの一つ。
「ここから中に入れるんですよ」
冨岡が言いながらドアを開けると、アメリアはドアそのものに興味を持ったらしく、まじまじと眺めていた。
「この扉、驚くほど静かに開くんですね。見たこともない構造ですし、軽そうな素材で・・・・・・」
まさか中に入る前にドアで驚かれるとは思っていなかった冨岡は首を傾げる。
「アメリアさん、このドアに興味あるんですか?」
「ドア・・・・・・ああ、扉ですね。いえ、興味というか、これのようなものを作他ことがあるんです。ほら、普段のお仕事でこういった細かい細工の組み立てを請け負うことがあるので」
言いながらアメリアが指差したのはドアの蝶番だった。ドアを固定しながら開け閉めする金具である。
アメリアが教会を維持するために、フィーネを育てるために出ている仕事の話のようだ。
「といっても、これよりも大きくてもっと動かしにくい物ですし、ほとんど別物ですよ」
そうアメリアは続けた。
自分が作ったことのある物が、五百年から千年程度進歩した姿を目の当たりにしたのだから、興味を持つのも当然である。
けれど、こんなところで躓いていては話が進まない。
冨岡はアメリアを中へと案内する。
「さぁ、中も見てください。ほら、フィーネちゃんも」
冨岡がフィーネを探すと、彼女は既に屋台の中で周囲を見渡していた。
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