ラウンド27 手綱オフ!
ノアを抱いて、広い公園を駆け抜ける。
すれ違う人々が物珍しそうにこちらを見るが、そこはスルー。
向かうのは公園の隅にある雑木林。
周辺への被害を最小限にしつつ敵を迎え撃つには、うってつけの舞台だ。
「よっと。」
下ろしたノアを背中にかばい、ジョーは笑みさえ浮かべて眼前を見る。
「ほらほら。せっかく
好戦的に言ってやると、木陰から黒い姿が現れる。
人数は五人か。
「これは、どっちへの刺客かなぁ…? ま、僕だっていうのは分かってて、あえて外に出てきてあげたんだけどさ。」
「なっ…!?」
それに驚いた顔をするノア。
そんな彼女を
「ふふ。最近の僕が研究所にこもりっぱなしなの、データを集めたいからだけじゃないんだよ? どこかの誰かさんが僕を消したいのか、ホテルじゃ毒と刺客のプレゼントが後を絶たなくてねぇ。」
「………っ」
「そろそろうざったくなってきたから、今日僕が女性をエスコートするって情報をあえて流してあげたんだけど……こうも簡単に釣られてくるなんて、お馬鹿さんなのかなぁ?」
「何…っ!?」
こちらからの煽りに、敵の皆さんはプライドを刺激されて不快な様子。
しかし、馬鹿なのは事実だから仕方ないじゃないか。
「今日のデートコースはお気に召しました? どこも君たちのアジトから遠くて、尾行要員を手配するのも大変だったでしょう? 暗殺ギルド【ウェイテスト】、チームテロンの皆さん?」
「―――っ!?」
「ちなみにさぁ、任務中はどんな時でも、コードネーム呼びとプライベートの切り離しを徹底した方がいいんじゃない? 幼馴染みどうしで仲良く暗殺業なんて、ご両親どころかご近所さんも泣いちゃうよ。」
「貴様…っ」
「どうしてそれを……なんて、三流の質問はやめてよね。」
〝君たちの会話なんて、最初から最後まで丸聞こえですよ。〟
暗にそう告げると、彼らは露骨に戸惑う素振りを見せた。
そりゃ、そうなるでしょうね。
暗殺者にとって、正体を見破られるのは死も同義なのだから。
故に……
「くそ…っ。何がなんでも、ここで
それぞれの獲物を手に、彼らが鬼気迫る表情で臨戦体勢に入った。
「ノア、下がってて―――」
そう言いながら彼女の肩に触れた時、小さな肩がぶるぶると震えていることに気付いた。
あれ?
もしかして、怖かったかな?
彼女のことだから、こういう場面には慣れていると思ったのだけど。
敵から目を離すのもどうかと思ったが、気になったのでノアをチラ見。
その結果。
「ぶっ…」
思い切り噴き出すことになってしまった。
涙を浮かべた膨れっ面で、拳を握り締めるノア。
きつい視線は暗殺者の皆様に向けられていて、〝せっかくのデートだったのに…っ〟というお怒りが分かりやすくたたえられていた。
「ねぇ、ノア! 一つ質問!」
案の定隙を突いて攻撃を仕掛けてきた一人を簡単にいなし、ジョーはノアに訊ねる。
「ルルアでは、正当防衛ってどこまで許されるの?」
「殺しても無罪! 命の対価は命じゃあ!!」
叫んだノアから、怒りが爆発する。
「そう。それじゃ―――」
ジョーは足元の茂みを蹴り上げる。
それで飛び出したアタッシュケースから短刀を取り出し、ノアに放り投げた。
「一応最低限の話は聞きたいから、一旦は半殺しでよろしく♪」
「任された!!」
怒り心頭の上にお淑やかモード解除のノアは、文字通り止まることはなかった。
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