第54話 調査のはずが何故?

 次の日の朝、ジャララは静かにカラチに近付き、

「カーラチ!

おはようさん。ちょっとお願いがあるんやけど〜」

「おはようさん⋯なんや?

お願い?気味悪いな」

怪訝そうな表情でカラチがジャララを見る。

「おはよ〜」

「皆様おはようございます」

旭さんとロナ様も合流し、朝食を皆でいただく。

 「それで、今日の予定は?」

「せやなあ…まずはいつも通り魔物調査やな。

この辺で出てくる魔物の種類は昨日のうちに酒場で聞いといたから、後は出会って倒して調べましょか」

「わかった。じゃあちょっと厨房借りてお弁当作っておくね」

俺が宿屋の厨房を借りようと立ち上がると、

「おかずに唐揚げ希望!」

「私も!」

「あの、わたくしもお願い致します」

アトルに続き、旭さんがおかずのリクエストを述べると、普段美味しい物を食べ慣れているが、俺の料理を食べて感動したロナ様もおずおずと手を挙げる。

「分かりました。では作ってきます」

ニコッと笑い、宿屋の主人と話をしてから俺は厨房で料理を始めた。


「そういえば、さっき言っていたんは何やったんや?」

街の近くの並木道を探索中、道すがらカラチがジャララさんに話を聞いてみる。

「あのな、実はこんなんが届いたんや」

そう言いながら昨夜届いた手紙をカラチに渡す。

「こ、これ⋯

おま、まだ前のギルドと手ェ切れてなかったんか!」

「シー!声が大きいわ!」

人差し指を口にあてて『静かに!』のポーズを取る。

慌てて口を押さえて二人で周りを見るが、他の人達は二人の会話に気付いていないようだ。

「で、どないするんや?」

「うーん、このまま死んだフリしてバックレる!」

いや無理だろ、という表情でジャララをカラチがジッと睨む。

「冗談は顔だけにせいや⋯」

「え〜?いい作戦やと思うたんやけど⋯」

カラチは前を向き直して、

「ま、はよ決着を着けた方がええで?後々大変になるからなあ」

「自分の事言うてない?それ」

「うるさいわ⋯」

二人で漫才じみた会話をしていると、道の真ん中に熊のような魔物が寝っ転がって道を塞いでいる。

「カラチ、これが言っていた魔物?」

俺が聞くと、

「せやな。聞いていたうちの一つや。デカイ図体の割りに素早い動きと力が強いそうや」

カラチが調査していた情報を伝えてくれて、皆が距離を置きながら臨戦態勢を取る。

「ジャララさん防御魔法を!」

「任しとき!」

ジャララさんが全員に防御魔法をかけ、防御力を上げる。

「いくぞ!」

アトルが斧を振り上げ魔物の首を狙うが、

「グルルルル」

俺達の殺気を感じたのか、魔物が目を覚まし、立ち上がって腕を振り上げたので、アトルが咄嗟に後ろに下がる。

「やばっ!」

後ろにさがりつつも臨戦態勢は崩さない。

「隙を作らないと!

旭さん魔法を頼む!」

「氷魔法を喰らえ!」

呪文を詠唱し終えた旭さんが魔物に向かって氷結魔法を放つ。

足元からじわじわと凍っていく魔法なので、魔物は足が動かせなくなり格好の獲物となった。

「よし!今だ!」

俺は腕での攻撃に注意しつつ、前方から後ろに回り拳での連打を繰り出し体力を削っていく。

カラチは弓矢で遠距離攻撃をしながらこちらも同様に魔物の体力を削っていく。

「グアアアア⋯」

ダメージを受けたためか、魔物がフラフラになってきたタイミングで、

「おりゃ!」

アトルが斧で魔物にとどめを刺して息の根を止めた。

「うっしゃー!勝った!」

アトルがガッツポーズを取っている時、何者かの攻撃魔法がロナ様に向かって放たれる。

「きゃあ!」

「危ない!」

俺とカラチが素早く動いてロナ様を庇い、なんとかロナ様にケガを負わせずに済んだ。

「ってー、誰だ!?

攻撃してきたのは!」

「お貴族様にケンカ売るなんて、なんて命知らずなヤツや⋯」

黒装束の人間が遠方に逃げていくのを捕まえられず、危険を感じつつも何故襲われたのかも分からないまま、俺達はその場を離れるしか出来なかった。











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