第二章10【信頼関係】

「それじゃあ、シュウと一緒に初めて依頼を達成した記念で━」


「「「乾杯!!!」」」


「……」


 トビアス達はヴァイグルに戻り、食事処に来ていた。今日は特別にトビアスが全て奢ると言ったのでルカがメニューを見ているが、少し困っているようだ。


「ねぇ、シュウ。これ何て書いてあるか読める?」


「熊肉の刺身、だ」


「あ、刺身か!熊肉は読めたんだけどね」


 恥ずかしそうにするルカ。そんなルカをアイリスが微笑みながらからかう。


「ルカちゃんは、文字の読み書きが苦手だもんね」


「う、うるさいわね、私はイ文字は読めるのよ、ただちょっとヒ文字が苦手なだけよ」


 文字の読み書きは王都の人間だと基本的に皆問題ないが、王都以外だと苦手な人は多い。ルカもその一人だ。彼女の場合は基本的なイ文字は読めるのだが、ヒ文字の方は少し苦手だと前々から言っている。


「シュウ君は文字の読み書きは大丈夫なんですか?」


「問題ない」


 静かに黙々と食事を取るシュウが答える。彼は父親が家名を得るほどの冒険者だ。そういう場合、基本的に幼いころから両親にみっちりと叩きこまれるものだ。自分も家が貴族なので、教育に関してはかなり厳しかった。


「シュウ、言っておくけどね!私は英雄エルクの冒険譚だったらどんなに沢山ヒ文字があっても、完璧に読めるんだからね!」


「別に聞いてないが」


「聞きなさいよ!!!」


「……」


「本当に、ルカちゃんとシュウ君は仲が良いですね」


 声を上げるルカに、笑うアイリス。今日は2人がシュウの過去を知ったり、皆で一緒に初めての依頼をやったりと色々あったが、無事にいってよかったと安心するトビアスだった。


 この後、酔っぱらったルカがシュウの顔を見ようと、周りの目がある中でフードを無理矢理取ろうとし、暴走する彼女を同じく酔っ払ったアイリスとトビアスが止めようともせずに大笑いするだけとなってしまったので、シュウからすると無事にいかなかったりしたのだった。



 * * * * *



「トビ、今日はどの依頼をやりますか?」


「うーん、シュウは何か希望はある?」


「森に」


「私もそれで大丈夫だよ」


 4人でパーティーを結成した2日後、彼らは再び冒険者ギルドで依頼の掲示板を眺めていた。結成日の夜にエールを飲みすぎたので、急遽昨日は休みとして。今日からまたパーティーでの活動がスタートだ。


「魔の森か……それじゃあ」


 シュウが魔の森での依頼を希望したのでトビアスは依頼を選ぶ。


「これにしようか。僕は受注を済ませてくるよ」


「あ、私も行きます」


 受付に行き、列に並ぶトビアスにアイリスがついていく。残ったシュウとルカの二人だが、以前のような気まずさは感じられない。シュウは相変わらず無口だが、ルカは気兼ねなく彼に話しかけるようになっている。


「それでさ、シュウ?あの2人、どう思う?」


「……」


 シュウの肩に腕を乗せ、にやにやしながら彼女が質問をする。シュウは相変わらず無言だが、彼女もその対応には慣れていたので、気にせず言葉を続ける。


「パーティーメンバーのシュウには伝えておくんだけどさ。アイリスがね、実はトビの事が好きみたいなのよ。まあ私は結構前から知ってたんだけどさー」


「俺には関係ない」


 無愛想に返事をするシュウに、ルカは「そんなことないのよ」と言い、一拍置く。


「いい?パーティーで一番大事なのは信頼関係なのよ。信頼関係が崩れたらそのパーティーはもう無理よ。シュウも誰かと組んでたことがあるなら分かるでしょ?」


「……かもな」


 自分の意見にシュウが一応同意したことで、ルカは流れに乗りそのまま周りに聞かれないように小声で喋り続ける。


「まあ、トビもアイリスの事は好意的に思ってるはずだから、私は大丈夫だと思ってるんだけど。もしもアイリスがトビに告白して、彼が無理だって言ったらこのパーティーはどうなると思う?」


「……」


「私もさ、一応そういう恋愛関係でパーティーが崩れるのは何回か見たことがあるのよね。それで、私としてはあの2人には上手くいってほしいって思ってるわけ。分かるでしょ?」


「……」


 無言で頷くシュウに笑顔になるルカ。一方で、トビアスとアイリスは彼らの順番が来たみたいで、依頼の受注をしている。彼らが戻ってくる前にこの話題を切り上げなければとルカは考える。


「というわけで、私達で、あの2人の関係を助けてあげないかって事よ」


「……俺にできることはないぞ」


 ルカと違い、シュウは基本的に聞かれたことしか喋らない。そんな彼がどうやって彼らの関係の進展、正確に言えばアイリスの事を助けられるのか。そう考えているのであろうシュウを予測して、ルカは「大丈夫よ」と一言添える。


「依頼中にメンバーを分ける時があるでしょ?あの2人を一緒にしてあげようってことよ。その時は私が適当に理由を付けるから、シュウは私に同意してくれればいい。わかった?」


「……」


 無言を肯定と受け取ったルカは、「じゃあ、よろしく」と言ったタイミングで、丁度トビアスとアイリスが戻ってくる。


「あれ?ルカとシュウは何話してたの?」


「別にー、秘密の内緒話しってやつ?」


「……」


「ふふっ、2人は本当に仲良しですね」


 質問をするトビアスににやにやと笑うルカと無言のシュウ。そんな3人を見てアイリスは微笑むのだった。


 シュウがここに来てからまだ日は殆ど経っていないが、既にこの光景が見慣れたもののように感じるとトビアスは思う。2人ともシュウの事をパーティーの一員として認めているし、シュウも以前に比べれば口数が増えてきている。

 

 パーティーで最も大切なのは信頼関係だ。互いを信頼できなければ共闘はできない。


「よし、それじゃあ森に向かおうか」




 * * * * *




「何だか、今日は森が静かですね」


「うん、そうだね。何だか魔物も少ないような気がするよ」


 森を歩いていると横にいるアイリスがつぶやく。自分としても今日の森は何だか妙な雰囲気を感じ取っていた。いつもだったら弱い魔物と頻繁に遭遇する場所を歩いていても、今日は今のところ、一度も魔物と遭遇していない。


「目的の魔物はもう少し奥にいるんだし丁度いいんじゃない?」


 余計な戦闘を減らした方が危険は減るので、ルカの言っていることもあっているが、今までこのような事は殆ど無かったので、変に警戒してしまう。何もなければいいのだが。


「たまに運よく魔物に会わない時も今まで何度かあったし。考えすぎかな?」


 ここは魔物の領域なので分からないことはある。自分達は結局はこの森においては外部の者だからだ。


「シュウ、君はどう思う?」


 この森に長いこと住んでいたシュウに尋ねる。彼はこの森をどう見るだろうか。


「……強力な魔物が降りて来る時は、弱い魔物が逃げだす」


「それじゃあ、突然強い魔物と遭遇するかもしれないんですか?」


 シュウの発言を聞き、アイリスが不安がる。自分達なら問題は無いと思うが、もしも奇襲をされたら、大分厄介である。

 深く考えていると向こうの茂みから音がする。何かが近づいてきている。


「皆、警戒しよう。何か来るぞ!」


 4人で警戒心を高める。シュウが言っていることが正しいのなら。普段はここには現れないような魔物が出てくるかもしれない。


「っ!━━こ、これは」


 現れたのはよくここらで見かける魔物であるトフウルフだった。トフウルフが群れをなして現れたのだった。


「なんだ、ただのトフウルフの群れじゃない。警戒して損したわ」


 そう言って群れに突進するルカ。彼女に続き自分達も魔物を討伐していく。どうやら、今回は杞憂だったようだ。


「よし、それじゃあ先に進もうか」


 そうして自分達は森の奥へと進んで行った。




 * * * * *




「討伐対象の魔物はここら辺に生息してるはずよね?」


「そうですけど、どこにいるのか探さないといけないですね」


 今回の目標はグランドベアーとフラムベアーの討伐。それぞれは大きなクマの魔物で、フラムベアーは炎魔法が殆ど効かないという厄介な特性を持っているが、このパーティーには炎魔法を使う魔導士がいないので問題ないだろう。グランドベアーは厄介な特性は無いが、フラムベアーよりかも素早く、力も強い。


 油断しなければ問題はないが、注意は必要だ。慢心をし、怪我や死亡をする冒険者がいるのはよく聞く話である。


「ねえ、トビ、その2体の魔物は一緒にいることはないのよね?」


「うん、彼らは互いに縄張り意識が強いみたいだね」


 それを聞くとルカは「それじゃあ」と何かを思いついたように両手を合わせる。


「ここは二手に分かれて、それぞれ探すのはどうかしら?」


 トビアスとしてはできればそれぞれの魔物を4人で安全に倒していきたかったのだが、今の森の状況を考えると、討伐対象はそう簡単には見つからないのかもしれない。捜索に時間をかけすぎると、帰る際に森が暗くなってしまう可能性もあるので。彼は考えを変える。


「そうしようか、メンバーの分け方は━」


「あ!私はシュウと行くから。トビは、アイリスと行ってくれない?」


 メンバーの分け方を考えようとするトビアスだったが、ルカが遮り、シュウと行くことを伝える。これは彼女とシュウがギルドで話していた作戦の通りの行動だが、当然トビアスは知る由もない。


「え、別にいいけど、今回は別の組み合わせでも大丈夫だよ?」


「いいのよ、私はシュウと一緒に戦ったことがあるし。今回はさくっと依頼を終わらせちゃいましょう?」


「わ、わかったよ、シュウはそれで大丈夫?」


「ああ」


 トビアスとしては、前回はルカとシュウが組んだので、今回は違った組み合わせのほうが良かったのではと考えたが、ルカの言う通り暗くなる前に依頼を終えた方がいい。シュウもルカの意見に反対しなかったので、ここはこのメンバー構成で行くことにしようとトビアスは決める。


「アイリスはそれで大丈夫?」


「はい、私はトビと一緒で大丈夫です」


「それじゃあ、シュウ、行くわよ。あ、それとー」


 シュウを連れてトビアス達とは反対方向に行こうとしたルカが振り向く。


「何をとは言わないけど、アイリス、頑張ってね!」


「ル、ルカちゃん!!!」


 ルカからの突然の鼓舞にアイリスは顔を赤くしながら反応する。この場で状況を察していないのはトビアスだけである。


「え?どういう事、アイリス?」


「な、なんでも、ないです!」


 こうして2つのグループに分かれたトビアス達一向はそれぞれ捜索を開始した。




 * * * * *




「討伐対象はどこにいるんでしょうか?」


 トビアス、アイリスの二人はシュウとルカと別れた後、魔物の痕跡を発見した。現在は痕跡を頼りに周囲の捜索を行っている。


「多分、さっきの痕跡はグランドベアーですよね?」


「そうだね、きっとこの近くにいるはずだよ」


 森の奥へと進んで行く二人の間には最低限の会話しかない。依頼中で、魔物にいつ遭遇するのかも分からないので、当然なのだが、アイリス的には少しはトビアスとの距離を縮めたかったりする。


「あ、あの、トビ」


 意を決してトビアスに話しかける。話しかけながらも周囲への警戒は決して怠らない。


「ん?どうしたの?」


「私って、そろそろランクアップするじゃないですか」


「この依頼を終えて、あともう一つくらいやれば、アイリスもCランクだね」


 このパーティーではトビアス、ルカ、シュウの3人は既にCランクなのに対して、彼女だけは未だにDランクである。シュウは分からないが、他の2人はその事を全く気にしていないのだが、彼女自身はその事を少し気にしていたりする。


「それで、私がランクアップしたら、一緒にお祝いをしませんか?」


「うん、いつもお祝いの時に借りてる店で今回も皆で━」


「いえ!そうではなくてですね、」


 トビアスの話を遮り、思わず大きな声を出してしまい、すぐに彼女はトビアスに謝罪をする。不用意な声を出すと魔物に奇襲される可能性もある。注意が必要だ。アイリスが話を遮ることは滅多に無いのでトビアスも驚いている。


「皆でお祝いをしてくれるのも嬉しいんですけど、その、」


「待って、アイリス。今、魔物の声が聞こえた。話はあとだ」


「は、はい」


 魔物の声を聞いたトビアスが話しを中断する。魔物の声は彼女にも聞こえていたので、もどかしい気持ちを抑えながらトビアスの後に続く。


「確かこっちの方から━━、見つけた」


 2人が見つめる先にいたのは大きな熊の魔物だ。その巨体は黒い毛皮で覆われていて、手足には鋭い爪がついている。あの爪の攻撃を喰らえば、重傷は免れないだろう。


「あれは、グランドベアーですね」


「それじゃあ、作戦だ」


 幸いにも討伐対象のグランドベアーは、まだこちらに気付いていない様子だ。その隙に茂みに隠れながら作戦を決める。


「初撃は頼んだよ」


「はい、いつでもいけます」


「ふぅ━━、行こう」


 深呼吸をした後、トビアスからの合図を受けたアイリスが魔法で生み出した氷の矢を放ち、それと同時にトビアスが剣を抜き接近する。


 敵の存在に気付いたグランドベアーも即座に対応をし、氷の矢を叩き落とすが、全ての矢に対応できず、数本の矢が身体に突き刺さる。それでも怯まないグランドベアーは接近してきたトビアスに両腕の鋭い爪を放つ。


「くらえっ!」


 爪を避け、すれ違いざまに斬りつけるが傷が浅かった。動きを止めないグランドベアーはトビアスではなく、自分の正面にいるアイリスに向かって突進をする。


「アイリス!」


「大丈夫です!」


 Dランクだが、トビアス達と依頼をこなしている彼女の場数も相当なものだ。知能が高い魔物によっては後方で援護をしている冒険者を狙う個体もいる。そのため、アイリスも魔物に接近されるのは既に何度も経験済みだ。


 アイリスは一度は攻撃を避け、魔法を放ちながら距離を取ろうとするが、グランドベアーは魔法を受けながらも、彼女を逃がさない。だったらと彼女も対応の仕方を変える。


「私だって、剣を使えるんですよ!」


 声をあげながら魔法で氷の剣を作り出すアイリス。彼女は魔法を主に戦闘を行うが、もしもの時の近接戦に対応できるように剣術も特訓している。


「えい!」


 魔法を放ちながら氷の剣でグランドベアーの攻撃に対応していくアイリス。相手もかなり消耗してきているようだが、この戦闘方法には欠点もあった。砕かれるたびに氷の剣を作らなければいけないので、魔力の消耗が激しい事だ。


 アイリスもこの欠点を理解しているため、独りなら戦法は使わない。それでも自分を援護してくれる仲間がいるなら話は別だ。グランドベアーの攻撃を弾いた後、今度は剣ではなく長い槍を作りリーチを活かしてグランドベアーの喉元に突き刺す。


 喉に槍が刺さってもグランドベアーは止まらない。この耐久性もこの魔物の特徴だ。それでも今グランドベアーの注意は完全に彼女に向いている。


「トビ!!!」


「喰らえっ!」


 背後から風魔法を使い急加速。接近したトビアスが背後からグランドベアーを剣で突き刺す。槍と剣に突き刺された熊の魔物は、声を上げその場に倒れこんだのだった。


「アイリス、凄いじゃないか!グランドベアー相手にあそこまで剣で戦えるなんて!」


「あ、ありがとうございます!」


 賞賛を送ってくれるトビアスにアイリスは頬を紅潮させながらお礼を言う。彼女が魔法だけでなく、剣術の訓練もしたのは彼に追いつく為でもあったので、剣を褒められるのは彼女にとっては魔法を褒められるより嬉しかったりする。


「これなら、Cランクになるのももうすぐだね」


「はい!━━それで、さっきの話の続きなんですけど、」


「ランクアップのお祝いの話だっけ?」


 魔物を討伐して、特定部位を回収した帰り道。戦闘前にしていた話しを再開する。トビアスはアイリスの前を歩いているが、彼女にとっては彼の顔を見ながらだと恥ずかしくなるのでこの方が都合が良い。


「そのお祝いなんですけど、皆で祝うだけじゃなくて、その、2人で食事に行きませんか?」


「え?」


 彼女の発言に前を歩いていたトビアスが立ち止まり振り向く。彼が見たのは顔を真っ赤にしているアイリスだった。


「わ、私は、皆とだけじゃなくて、トビと一緒に2人でお祝いしたいんです。駄目、でしょうか?」


 顔を真っ赤にしながら自分の思いを伝えたアイリスは、彼の返事を待つ。アイリスは、本当はトビアスと同じCランクになってから伝えたかったのだが、昨日街にルカと出かけた際、後押しをされたので今日こうして彼女の思いを告げたのだった。


「……アイリス」


「は、はい!」


 実際にはほんの一瞬だが、彼女の体感では永遠とも思える時間。そんな一瞬の間を置き、トビアスはアイリスの名前を呼ぶ。名前を呼ばれて顔を上げた彼女が見たのは、自分と同じように顔を赤くしたトビアスだった。そんな彼は彼女に手を差し出す。


「僕でよかったら、喜んで君と2人でお祝いを」


 そういうトビアスの手は少し震えている。恥ずかしさもあるが、緊張もしているのだろう。その僅かに震える彼の手をアイリスは満面の笑みで握りしめた。


「ありがとうございます、トビ!」




 * * * * *




「2人とも、遅いですね」


「捜索に手間取っているのかもしれないね」


 平静を取り戻した2人は、シュウ達との合流地点に戻ってきていた。ここに来てから少し経つのだが、彼らは未だに戻ってこない。


「あの2人なら、討伐にはそこまで苦労しないと思うんですけど」


 アイリスの言う通りあの2人の実力なら、魔物の討伐にはさほど時間を取らないだろう。特にシュウの実力は、このパーティー内では頭が抜けているはずだ。依頼をこなしていなかったので、未だにCランクだが、シュウの実力ならすぐにでもBランクになれるとトビアスは予想している。


「あ、帰ってきたみたいだね」


「あれ?でも、ルカちゃんだけみたいですね」


 こちらに走ってきたのはルカだ、何故かシュウはおらず独りだ。しかも何だか表情が焦っているような。しかもよく見ると彼女の全身には、まるで斬られたかのように細かい傷が大量にあった。まさか、


「ルカちゃん!大丈夫ですか!?」


「ええ、私は大丈夫!!!それよりシュウが!!!」


「ルカ、落ち着け!まずは君の怪我を!」


「え、ええ」

 

 アイリスに回復薬を渡されたルカがそれを飲む。切り傷は浅かったみたいで、彼女の怪我は問題ないようだが、その怪我が妙だ。


「ルカ、何があった?その怪我は魔物にやられたんじゃないよね?」


「……シュウに、やられたのよ」


「え?」


「シュウ君が、ですか?」


「そうよ、他の冒険者に襲い掛かったシュウを止めようとしたら、あいつに思いっきり風魔法で吹き飛ばされたのよ。『邪魔だ』とか言って。本当に意味わかんないわよ」


「シュウ……どういうことなんだ」


「トビ、どうしますか?」


「……」


 自分達は上手くやれていたじゃないか、信頼関係だって築けていたはずだ。なのに他の冒険者に襲い掛かった挙句、ルカの事を魔法で吹き飛ばした。彼の考えていることが分からない。 シュウは彼女に邪魔だと言ったらしいが、いったい何が━、


「……シュウの所に行こう。ルカ、道を案内して」

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