第66話 目的地へ④
山道を歩く。
周りの景色は絶景が広がっていたが、数日も経つと飽きるものだ。
後を振り返ると俺達の過ごした首都ベラサグンが遥か遠くに小さく見えた。
標高が上がってきたのか空気が薄いのを実感できる。
少しペースを落とし休憩をしながら少しずつ進む。
魔物とも何度か遭遇したが、俺達もかなり強くなった。セバスティアーナさん抜きでも楽に対処している。
あのフロストベアにも数回出くわしたが俺達の敵ではなかった。
道中何度か迷宮都市タラスから来る商隊ともすれ違った。
そこで俺達は迷宮都市タラスまでの道中についての情報交換をした。
それから、何個かの山を越え、ついに俺達は最終目的地である迷宮都市タラスに着いた。
目の前には城壁が見える。
ここもやはりカルルク帝国の都市に共通した城郭都市となっている。
しかしバシュミル大森林のすぐ側でありカルルク帝国の最北端ということもあるのか、その城壁は他の都市に比べてより堅牢な造りになっていた。
巨大な石の壁がそびえ立ち、所々に見張り搭が配置され数人の兵士が常駐している。
俺達は分厚い鉄で造られた門を抜けると、迷宮都市の内部が広がっていた。
石畳の道はまっすぐに延びており、石造りの建物が立ち並んでいる。
街の奥には高台があり都市の中心部には大きな建物がそびえ立ち、その周囲にも立派な建物が建ち並んでいる。
「ついに、ここまで来たか。やったな!」
「ええ、やったわ!」
俺とシャルロットはハイタッチをする。
迷宮都市タラス。
ついにここまで来たのだ、エフタルの炎上事件から一年、ついに俺達は目的地にやってきたのだ。
「お二人とも、本当にお疲れさまでした」
いつも無表情なセバスティアーナさんがこの時だけは少し微笑んだような気がした。
俺達は、セバスティアーナさんに案内され、高台から少し離れた人工林の奥にある。一軒家に案内された。
その建物は、壁は土や石を使っており、床は木製、窓は木の枠でガラスが張られている。
決して豪華でもなく、かといって貧しいわけでもない平凡な家に見えた。ここがルカ・レスレクシオンの屋敷なのか。
想像していた辺境伯とは少しイメージがずれていたが、セバスティアーナさんがノックもせずに扉を開け中に入ったので間違いないだろう。
「はぁ……、やはり思ってた通りの事が起きてしまいました」
ため息をつきながら再び外に出てくるセバスティアーナさん。
「中は狭いですから、お二方は気を付けてついてきてください」
どういうことだろう、そんなに狭い家とも思えないが。
だが、玄関に入ると思い知った。
部屋の中にはいたるところにゴミが積まれていた。ほとんどが缶詰の空き缶ばかりだ。
いろんな缶詰のラベルがまるで巨大な壁画のように壁一面に積まれていた。
「気を付けてください。少しでも崩してしまうと一気に崩壊して我々は空き缶に埋まってしまうでしょう」
俺達は、積まれた空き缶を避けながら。ゆっくりと中を進む。
そして、奥の部屋へと入る。ここは寝室か、ベッドがある以外は相変わらずゴミだらけだ。
さすがにベッドの上はゴミは無かったが、足の踏み場もないとはこのことだ。
セバスティアーナさんは、大きな暖炉の横に手をかざす、なにかスイッチの様な物でも押したのか、暖炉は横にスライドしてそこには階段が現れた。
隠し階段とは随分と用心深いのだろう。
「なるほど、上の階は廃墟ということにして、実際の生活空間は地下なんですね?」
俺がダメ元でそう聞くと。
「いいえ、上の階が生活空間ですよ。ほら、食事の痕跡が残っているでしょ? あちらこちらに……」
やはり違ったか、ルカ・レスレクシオンは相当ずぼらな人のようだ。
そして地下室に降りると、そこには広い地下空間が存在していた。
薄暗かったので全体は分からなかったが、少なくとも上の建物よりも広いのではないだろうか。
セバスティアーナさんは、階段の直ぐ近くの小さな部屋に入った。
「ルカ様、ただいま戻りました」
「おう、セバスちゃん。お疲れさん。思ったより早かったじゃないか。さすがは吾輩のセバスちゃんだ」
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