第8話 呪いのドラゴンロード
王城の城壁に立つ人影が数人。
彼らは王城に近づくドラゴンを撃退するために、城壁の上にて待ち構えていた。
本来なら弓兵が並ぶであろう城壁であるが。
今回は全て魔法使いだった。それも少数精鋭、彼らはいずれも宮廷魔法使いだ。
彼らの一人が目の前の上空に滞空しているドラゴンに向かって叫ぶ。
「おのれ、邪竜め、王との盟約を忘れたか!」
ドラゴンロードは笑う。
『ハッハッハ! 笑わせるな、詐欺師どもめ、我が何も知らぬと思ったか!
盟約を破ったのは貴様らの方ではないか。
契約の破棄を、あろうことか、この呪いのドラゴンロードに対して行うとは愚の骨頂ではないか?』
「ち、やはり化け物には会話は成立せんか。いくぞ皆の者、魔力を集めよ!」
宮廷魔術師の首席と思われる人物の号令を上げると。
他の宮廷魔術師たちはいっせいに首席を中心に魔法を唱える。
次の瞬間、ドラゴンの真下の地面に大きな魔法陣が描かれた。
「ゆくぞ、化け物! 極大氷結魔法、最終戦争、第二章、第一幕『永久凍土』!」
周囲の空気が凍る。
そして魔法陣から無数の氷の槍がドラゴンに向かって射出される。
その氷の槍の一つ一つは中級魔法のアイスジャベリンと同等かそれ以上の大きさがあった。
無限とも思われる氷の槍の攻撃にドラゴンはあっという間に氷漬けになっていた。
だが、それは次の瞬間には青白い光と共に、炎の柱がドラゴンを覆いつくしてしまう。
『ふむ、なかなか良い魔力だ。だが残念だな。我に氷結魔法は効かんぞ。火竜ではないからな。
呪いのドラゴンロードだと言っただろう』
「ば、ばかな、極大魔法が効かないなんて。そんな、なら我らはどうして……」
『ふん、ではさっそくいただくとしよう。頭が高い平伏せよ』
「まずい、皆! 呪いのドラゴンロードの言葉を聞くな! 支配されてしまう」
『遅いわ、それにもはや貴様らは敗北を確信したのだ、言葉など必要ないさ』
既に宮廷魔術師たちは地面に縫いつかれたかのように片膝を着き頭を下げていた。
呪いのドラゴンロードは精神の弱い者が見ればたちまち発狂してしまう。
強者でも一度敗北を確信してしまうと心は支配され、立つことすらできなくなってしまうのだ。
…………。
グシャリと音がした。
『……不味いな。魔力が弱すぎる。さて、あまり時間がないか、まったく人間とは忙しい生き物よ』
ドラゴンロードは目の前の王城の中心に向けてドラゴンブレスを放った。
外壁を溶かし、蒸発させながら。
そして、城の中心から大爆発を起こし巨大な火柱を作った。
『さて、これで我の仕事は終わりか。クリスティーナが到着するまでは暇だな』
ドラゴンロードは次はどれがいいか考えている。王城の周りには大きな建物がいくつかある。貴族の屋敷だろうか。
『丁度よい。順番にあぶりだしてやれば、案外あの小娘の様な大物が釣れるかもしれん。
それに貴族の数を減らす手伝いもしてやれる。
我が眷属の為に働くのもまた一興というものだ』
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