第20話 アリス・クトゥは逃がさない③《アリス・クトゥとの日々⑦》


 アリスからの誘いに頷いた後。

 僕は馬車に揺られながら運ばれていた。何故か目隠しされたままで。

 おかしいと思うよね。僕もそう思う。


「えっとこれどこかに売り飛ばされるとかします?」

「貴方みたいなのが売れるわけないじゃない。身の程を知りなさい」

「……はい」


 僕もそう思う。仮に売れたとしてもクーリングオフするレベル。


「どうしてこうなった……」


 馬車に揺られながらも、何故こんなことになったのかと思い返すがやはり理解不能だった。


 あの後、場所を移すらしく僕は近くに用意周到に用意された馬車に案内された。

 そして馬車の前に立つや否や、屈強な肉体を持つ騎手に問答無用で目隠しをされ中に荷物のごとくぶち込まれた。そして現在に至るわけである。

 ふむ、自分で言っていて全く分からん。


「……ねぇモブリオン君。私だって本当はこういう事を言いたくないの。誘導するのはやめてほしいわ」


「僕にそんな特殊過ぎる趣味はねぇよ。それでどこに向かっているの? 後なんで目隠し?」


「秘密。それは着いてからのお楽しみよ」


「楽しいとこだといいなぁ……」


 地下強制労働施設とかじゃないよね。帝〇的な。

 逃走したくなってきたな。しかし目隠しされてるしアリスの目もある。詰んだか。


「こういう時どういう話をするべきなのかしら。自慢じゃないけど、私一般的な女子と比べて価値基準がずれているのよね」


 そりゃそうだ。普通の女子高生はここまで毒舌が酷くないし、そもそも視界を奪って強制連行などしない。女子力の値が虚数海域に突入していると言っても過言ではないね。


「失礼なこと考えている顔しているわね。いいわその安っぽい挑発に乗ってあげましょう。例えば……」


 急に沈黙が訪れた。どうやら次に何を言うべきか長考しているらしい。


「恋バナね恋バナしかないわ。恋バナをしましょう」


 時間にして一分程度。たっぷりと時間を使った彼女は自信満々にそんなことを言い放った。


「貴方の好みの女性のタイプを言いなさい」


 えぇ……恋バナというか尋問だろこれ。


「い、いやぁお互いに愛情的なのがあればいいんじゃないでしゅかね……」


 怖すぎて最後噛んだんですけど。

 仕方ない。アリスから僕を貫くように発せられている威圧プレッシャーは、凶悪犯を尋問する刑事のそれだ。正直おしっこがちびりそうなまである。


「貴方のその優柔不断な発言は聞いていて不快だわ。それじゃ誰でもいい節操無しじゃない」


 しかもこの発言である。


「……実際のところリッカさんはどうなの? 最近はギルドのほうでとある錬金術師とも交流があるみたいだし、そこのところを含めて是非聞きたいところね」


「怖い怖い。僕のプライバシーがまるでないんですけど」


 しまいには大きい方まで漏らすぞバカ。

 ていうかこの世界の個人情報管理はどうなってるんだよ。あまりにもガバガバ過ぎるだろ。


「それでどうなの?」


 アリスがこちらに近づいた気配を感じた。どうやら答えをはぐらかせるつもりはないらしい。


「はーまったくなんでそんなことを聞きたいんだか。ないよ。ソレイユもアルケイディアも全くもってそういう対象じゃない」


「二人とも十分美少女に該当すると思うけど……もしかして薔薇というかそっち系?」


「違うわ! キチンと女の子が恋愛対象ですー!」


 ただし原作ゲームのメインキャラではない女の子に限る。


「じゃ、じゃあ私とかはどうなの……?」


「えっ」


「こ、後学のためよ。いいからつべこべ言わず可及的速やかに答えなさい!」


「え、いや、あー」


 改めて聞かれると非常に困る質問だ。原作において彼女はサブクエストに登場するキャラであり本編には全くもって関わってこない。そう考えるとリッカみたく原作キャラがゆえに関わりたくない人物でもないのだ。


「ほ、保留で」


 困惑した僕はそんな玉虫色の返答しか出来なかった。

 いやこちとら単なるモブよ? 

 イケメン原作主人公様みたくスマートに答えられるわけないじゃん。 


「はぁ……この粗大ゴミはよくそんな返答恥ずかしげもなく言えるわね」


 彼女は僕の返答にそれはそれは深いため息を吐いた。なんかごめん。

 しかしその声音は怒りや悲しみを滲ませているというわけでもない。何故かまんざらでもないといった感じに思えた。


「ふふふ、でも私のほうがあの二人よりも上なのね」


 そして彼女はどこかとても嬉しそうにそんなことを言うのだった。


 その後、満足したのか会話は終了しアリスは機嫌よく鼻歌を口ずさみ始めた。会話こそないが綺麗な声音と程よい振動に包まれた心地よい空間。それは目的地に到着するまで続いた。


 ところで僕はまだ目隠しされたまんまなんです?






◆◆◆



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