夏休みにて 41

「あの頃が懐かしいわね……」


 そう言って、マグカップに入った白湯をズズっと飲むのは涼香りょうか


「いつの頃ですか?」

「水族館行った時よ」

「ちょっと前じゃないですか」


 冷水を飲んでいた涼音すずねがツッコミを入れる。


 あの頃――と言うから、年単位で前だと思った。


「あの頃は夏休みの終わりなんて見えていなかったわ」

「確かにそうですけど」


 水族館へ行ってまだひと月も経っていないのだが、涼香の言う通り、夏休みの終わりが見えると、とても遠い過去のような懐かしさを覚えてしまう。


「もう一度行きたいわ」

「涼しくなってからですね」

「約束よ?」

「はーい」


 その前に乗り越えらなけばならない障害は考えないことにする涼音である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る