夏休みにて 36

「やることなーい」

「もうすぐお盆よ」

「嫌だあああああああ……実家に帰ります……」


 夏休みのこと。


 モゾモゾと芋虫のようにリビングから出ていこうとする涼音すずね涼香りょうかが捕まえる。


「まるで喧嘩した夫婦ではないの」

「なに言ってるんですか」


 立ち上がった涼音は、涼香と共に戸締りを確認して家を出る。


 向かう先は斜向かいにある檜山ひやま家だ。水原みずはら家と檜山家の違いは大差無いが、檜山家の方が調理器具が多い。


「なにを作るの?」

「面倒なんでベイクドチーズケーキですね」

「楽しみね」


 二人は檜山家へ入る。


 水原家とあまり変わらない間取りの家、とりあえずリビングに行き、冷房を効かせる。


 部屋が冷えるまでの間、冷蔵庫を確認すると、水原家の冷蔵庫とは比較にならない程の食材が――。


「スイーツ作りに使える材料ばっかり」

「やっぱりこっちでもお昼はそうめんなのね」


 ある訳でもなかった。


 もうそこは仕方ないと諦め、冷蔵庫からクリームチーズを取り出す。


「暇つぶし、始めましょうか」

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