水原家の台所にて 9

「そうめんとうどんの違いは知っているかしら?」

「知りません」

「即答ね……」


 涼香りょうか涼音すずねと台所にやってきた。


 目的はそこら辺にあるそうめんだ。


「違いは太さと言われているわ」

「へー」


 調べたところ、日本農林規格で基準が設けられているらしい。


「ということは、そうめんを纏めて食べてうどんの太さを越せばそれはそうめんではなくなるのよ!」

「さすが先輩‼」


 適当に流そうと思ったのだが、どうせそうめんを食べることになるのだ。ここはテンションを上げていかなければならない。


 早速涼音は鍋で湯を沸かし始める。茹で上がるまで、このテンションを維持できるかが問題だ。


「……そうめんって一本ずつ食べないわよね」

「えぇ……」


 しかし涼音より先に、涼香のテンションが維持できなくなったようだ。


 目を逸らしていた事実を涼香が言った瞬間、涼音のテンションも下がる。


「もうできますよ」

「今日もそうめんなのね……」


 二人のため息も湯気と一緒に、換気扇に吸い込まれていった。

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