夏休みにて 28

 夏休みのこと。


「どうしたんですか?」


 理由は知っているが、沈痛な面持ちの涼香りょうか涼音すずねは声をかけてみる。


「明日は土曜日よ」

「はい」

「……勉強よ!」

「頑張ってください」

「一緒に勉強しましょうよぉぉ!」


 お腹に頭をグリグリしてくる涼香を押し返しながら、涼音は面倒そうに言う。


「えー」


 ついこの間まではそれもいいなと思っていたのだが、もうそろそろ涼香の誕生日のことで打ち合わせをしなければならない。そのため、涼香と一緒にいる訳にはいかないのだ。


「どうして嫌がるのよ」

「先輩の誕生日の打ち合わせですね」

「……それなら仕方がないわね」


 あっさりと物理的にも引き下がった涼香。どうせ誕生日のことはバレているのだ、秘密にしておく必要は無い。


「私をあっと驚かせるもの、期待しているわよ」


 綺麗なウインクを決める涼香であった。

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