#20 ミイナ先輩に相談
翌日、起きてからシャワーを浴びて、学校のジャージに着替えてから食事して、登校した。
佐倉さんへのメールの返信は、まだ出来ていない。
何を書けば良いのか考えが纏まらないので、どうせ今日の部活も片付け作業だけだろうし、部活しながらじっくり考えようと思う。
7時50分には学校に到着したので、駐輪場に自転車を置いたら、そのまま直接校舎裏の駐車場へ向かうと、既にミイナ先輩が来ていた。
1台の黒いワゴンタイプが停まってて、その車の外でジャージ姿のミイナ先輩がヤンキー座りして待っていた。
深夜のコンビニとかでよく見る光景だ。
「おはようございます。早かったんですね。ドコのヤンキーかと思いましたよ」
「あ!アラタ、おはよう!ヤンキーってウケる」くすくす
僕が挨拶しながら近寄ると、運転席から男性が降りて来た。
ミイナ先輩のお父さんだと思ったので、すぐさま「おはようございます。いつもミイナ先輩にお世話になってます!今日はありがとうございます!」と挨拶すると、「おはよう!どうせ家の倉庫にしまってた要らないのだからね。気にしないでね」と優しい口調で、答えてくれた。
ミイナ先輩のお父さんは、一言で言うと、熊みたいな大きい体格で、髭を生やしてニコニコ笑顔の優しそうなオジ様だったけど、ミイナ先輩とは全然似てなかった。きっと母親似なんだろう。
車の後ろからお父さんと協力してソファーを降ろすと、お父さんは「じゃあ帰るね」と言って車に乗って帰って行った。
ソファーは、木製の手すりと脚のシンプルなデザインで、重量は思ってたよりも重くなくて一人でも運べそうな重さだったけど、ミイナ先輩が「じゃ!3階まで頑張って運ぶよ!」と自分も運ぶ気満々で気合入れてたので、二人で協力して運ぶことにした。
ミイナ先輩の荷物は、ソファーの他にも大きなスポーツバッグやパンパンに膨らんだリュックもあったので、それらは僕が全部背負った状態でソファーも運んだ。
よいしょ、よいしょっと二人で運んでいると、GW中でも部活で登校している他の生徒さんたちから物珍しそうな目で見られていたけど、なんだか楽しかった。
ソファーをぶつけたりして傷つけないように気を付けながら部室棟の3階まで運び、邦画研究部の部屋の前まで来ると、流石に二人ともゼェハァゼェハァと息が上がっていた。
一旦ソファーを置いて、ミイナ先輩がジャージのポケットから鍵を取り出し鍵を開けてから、入口扉を開けたままにして「あと少しだから、頑張るよ!」とミイナ先輩の気合の掛け声と共にソファーを持ち上げて室内に運び込んだ。
配置はとりあえず後で考えようってことで、ズラしながら壁際に置いて、そのソファーの上にミイナ先輩のスポーツバッグとリュックも置いた。
その間にミイナ先輩が窓を開けて換気も始め、僕は畳の上に腰を下ろして「結構疲れましたね」とゴロンと横になった。
ミイナ先輩は「私、荷物の整理しちゃうからアラタはそのまま休んでていいよ」と言って、ソファーに置いたバッグやリュックの中身をジャンジャン出し始めた。
畳で横になりながらその様子を眺めていると、タオルケット、クッション、卓上鏡、消臭剤、ノートPC、PC用のスピーカー、携帯wi-fi、延長コード、スマホの充電器、DVDのパッケージ多数、ポーチ、ブラシ、と次々に出して、ソファーや畳の上に並べていった。
「結構な量、持ち込みましたね」
「そう?今日はコレくらいしか持ってこれなかったけど、まだまだ他にも持ち込むつもりだよ?」
「もうここで生活する勢いですね」
「アラタも部室に置きたい物あったら、持ってくれば良いからね」
部室に置きたい物か。
本とか勉強道具くらいしか思いつかないや。
「うーん、色々持ってきても、床とかに置いてると散らかってるみたいで嫌だよねぇ。棚が必要かなぁ」
「棚ですか。 確か他の空き部屋に棚が放置されてましたよ。ホコリ塗れだったから掃除しないとダメですけど、それでも良ければ使います?」
「鍵掛かってるんじゃないの?」
「僕、総務委員ですよ。各部室の鍵は委員会室にも置いてあるので、今からでも開けられますよ」
「ホント?じゃあ見るだけみてみよっか」
「了解っす。 職員室で委員会室の鍵借りてからになるんで、少し待ってて下さい」
「おっけー!」
それから直ぐに職員室へ行き、総務委員会室の鍵を借りて部室棟の4階の委員会室から目当ての空き部屋の鍵を持ち出して部室に戻り、ミイナ先輩に声を掛けてから同じ3階にある目当ての部屋へ向かった。
中にはホコリ塗れになった古い棚が2つあり、ミイナ先輩が「デザインはイマイチだけど、大きさはバッチリ」と言うので、2つとも廊下に運びだし、水拭きで綺麗にしてから邦画研究部の部室に運び込んだ。
「なんか、棚置いたら一気に部室っぽくなったね」
「この棚にDVDを並べてライブラリーにしたいですね。僕も家にあるのとか持ってこようかな」
その後はミイナ先輩が私物を棚に並べたりしてたので、僕は持ってきていたメジャーで窓や壁のサイズを計測して、メモしていった。
直ぐに計測は終わったので、遮光カーテンやスクリーンのことで考えていたアイデアをミイナ先輩に提案して、そのアイデアを元にミイナ先輩のノートPCで色々調べたり、明日は必要な物を買い出しに行こうと、買い物メモを書きだしたりして過ごしていると、お昼になったので昨日と同じく二人でコンビニに買い出しに行って、部室で昼食を済ませた。
昼食の後は予定は無かったので、そのまま二人でゴロゴロしながら好きに過ごすことになった。
ミイナ先輩は、ノートPCで動画を見てて、僕は佐倉さんに送るメールの内容を考えていた。
でも、考えれば考えるほど、何を書けば良いのか分からなくなってしまい、ミイナ先輩に相談してみることにした。
「ミイナ先輩に相談なんですけど、聞いてもらえますか?」
「うん、なになに?」
「小学校時代の同級生と高校に入ってから再会したんですけど、その子が当時から僕のことを色々感謝しててくれたらしくて、それを最近メールで言われまして、その返事をしたいんですけど、なんて書けばいいのか分からなくて」
「この学校の子?男?女?」
「この学校の同じクラスで女の子です」
「その子的には、アラタに対してラブな感じ?ただ感謝してるだけで、再会出来て懐かしいねって言ってるだけ?」
「うーん、そこはグレーです。 恋愛感情あるかどうかなんて聞けませんし」
須賀さん情報だと、ラブの可能性も考えられたけど、確かめた訳では無いので、その可能性は話さないでおいた。
「でもグイグイ来てたら分かるんじゃないの?」
「グイグイなんて来ませんって。そんなのミイナ先輩くらいですよ」
「それもそっか。 でも、うーん・・・話聞いてのイメージだけど、私の時みたいに、その子が何かトラブってた時にアラタが助けてあげたのかな?それでその子はそのことをずっと感謝してて、久しぶりにアラタに再会出来て嬉しくてその話をしてくれた、と?」
「そんな感じです」
「そういえば、小5で引っ越してコッチに戻って来たのは最近なんだっけ?」
「そうです。それで再会しました」
「うーん・・・やっぱ、「覚えててくれて嬉しいよ」とか、「今度、遊ぼう」とか、そんなことくらいしか思いつかないかなぁ」
「なるほど。僕もそんな感じなんですよね。 その子が結構ナイーブというか情緒不安定な子なんで、変なこと書けないし、でもあっさりし過ぎてると冷たいって思われそうで」
「別にいいんじゃない?冷たいって思われたってさ。 アラタは気を遣い過ぎなんだよ。別に恋人だとか好きな人だとかじゃないなら、当たり障りないことで良いと思うよ?」
「そうですかね」
でも、ミイナ先輩の言ってることは、尤もだと思えた。
身構えすぎて何も言えなくなるより、適当だと思われない程度に肩の力抜いて返事すれば良いのかもしれない。
「まぁ、あんまり適当にしてると、私みたいに謂れのないこと言われて嫌な思いすることもあるから、程々にしないとだけどね」
「んん?何かあったんですか?」
「あー私のことはいいじゃん。 それよりも、メールの返事するならあんまり待たせない方がいいんじゃない?その子、ヤキモキして待ってると思うよ?」
「そうですね。 今からメール書いちゃいます」
ミイナ先輩は、初対面の時からちょくちょく気になる様な言い方をすることがあった。 いつも元気でテンション高いミイナ先輩でも、色々と悩んでることがあるのかもしれない。
なんとなくだけど、可愛くてモテる先輩でも、だからこその悩みがあるんだろうな、と思う。映研でのトラブルだって、正にそんな感じだったみたいだし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます