第10話 (絵あり)第9話・番外編 種子保存室に来た、エリオット

近日ノートに挿し絵があります。

★43★です。



「あれ? ここにあったと思ったけど……どこだろう?」

「エリオット? そこで何をしているの?」

「やぁ、ぽぽぽ。ちょうどよかった。ここに置いてあった、『地球』の固有種の作物の種が入ったエアボウルを知らない?」

エリオットが聞くと、

「『地球』は、その場所でしょう? ないの?」

ぽぽぽが、空っぽの植物の棚をのぞきこんだ。

「ここだよね? でも、ないよ」

「そうだ、この前、『地球』の作物の種を持っていったのを見た。あの机の上で。ここにきちんと戻したの?」

「あ……もしかしたら、急いでいたから、別の場所に置いてしまったのかもしれない。ぽぽぽ、一緒に探してくれない?」

エリオットが頼むと、

「仕方ないね、探すよ」

ぽぽぽが言った。


エリオットとぽぽぽは、広い種子保存室の

中を、手分けして探した。


「あったよ」

ぽぽぽから、テレパが入った。

「どこ?」

エリオットが聞くと、

「しっぽを伸ばすから、ついて来て」

ぽぽぽが言った。

エリオットのそばに、いつの間にか、

ぽぽぽのしっぽがあった。

それは、縮みながら、道案内をしてくれた。


「ここにあったのか、ありがとう」

エリオットが言うと、

「どうしてまた、持っていくの? この前、持っていったばかりでしょう?」

ぽぽぽが、不思議そうな表情をした。

「そうなのだけど、ちょっと……また燃えて、足りなくなって。これ、減った分だけまた、培養して増やしておいて」

エリオットが言うと、

「分かった」

ぽぽぽが、うなずいた。

エリオットは、エアボウルに入った、地球の

固有種の作物の種を、いくつか取り出して、

ヴィグラで吹き出したエアボウルの中に

入れた。

「地球人は、どうしてすぐに問題を起こすの? 培養すれば増やせるけど、作物の種を粗末にしすぎだよ」

「客観的に見ると、作物の種を粗末にはしてしまったけど、地球人が問題を起こしたのかは、分からないよ。偶然かもしれないし」

エリオットが反論すると、

「数千億年以上、観てきた。問題ばかり起こしている」

ぽぽぽが、不機嫌そうに言った。

「『賢いがゆえ』だよ。色々な感情が生まれてしまう。単純に考えてくれたら、いいのだけど……また、同じことが起きたら、残念だけど、『偶然』とは言えなくなるね。でも、気の毒だから……」

エリオットは、悲しそうな表情をした。

「すでに『偶然』とは、言えないよ。調べたらすぐに分かる」

「そうかもしれないけど、まだ希望を捨てたくない」

エリオットが言うと、

「そう、理解できない。今度は、指定された場所に置いてね」

ぽぽぽは、どこかへ行ってしまった。


「僕だって、本気で『偶然』だとは、思っていないよ。でも……理由があると思う。それを、知りたい」


エリオットは、ぽぽぽの後ろ姿に

つぶやいた。

『地球』の固有種の作物の種が入った

エアボウルを、指定された植物の棚に戻して、

種が入ったエアボウルを引き連れて、

エリオットは、作物室へ向かった。



○次回の予告○

第11話


トトン教授の物理サークル





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