第4話 超越神社
顔がこそばゆい。どこだここは?ほのかに甘い香りが漂ってくる。なんだか後頭部に柔らかいものがあるぞ。
意識が段々はっきりしてきて、目を開ければ、視線のすぐ先にとんでもなく美しい顔があった。
あれ?たしか僕は自称女神様と会っていたような……。ここは僕の部屋か?ああ、ずっと膝枕させるのも迷惑だな。起きないと。
「まだ、無理をしてはだめですよ」
「いや、もう大丈夫だよ。ありがとう。それより、僕はどうやってここに来たの?」
「ちょっと前に、お荷物が届いたようなので玄関で受け取っていたら、部屋の方からドシンという音がして、見に行けば床で寝ていました」
まじでか。知らないうちに人生始めてのテレポートを体験してしまった。こんな事ができるなんて、あの光の人は本当に女神様なのかもしれない。
「こちらお荷物です」
天女ちゃんから小さなダンボールを渡された。ネットで買った封印の御札だ。もう必要なくなったから、無駄になっちゃったな。
「ありがとう」
「どういたしまして。待ち人さんには会えましたか?」
「うーん、まあ会えたんだけど……」
「どんなお話されたんですか?」
「えーっとね……」
天女ちゃんには女神との邂逅についてすべて話した。光の女の人が女神である事、女神から神をやれと言われ、神の力を与えられた事、あと住居を用意してある事とか。
「わあ~、光の女の人は女神様だったんですね!女神様、助けてくださってありがとうございます」
とんでもない美少女はこんな荒唐無稽な話をすんなりと信じた。彼女は天に向かって祈っている。……早く住む所に案内してあげないとな。水晶に聞けとか言っていた気がするが……。
水晶はカバンの中に入れておいた。カバンはどこにあるかと探せば、ベッドの上にあった。カバンも一緒に転送してくれたようだ。
中から水晶を取り出せば、青白い淡い光を放っていた。女神様に会う前は普通の透明な水晶だったんだけど。
「おお!?」
まじまじと眺めていたら突然光が強くなった。部屋の中全体を照らすほどの光量だ。
「な、なんですか!?」
光はすぐに輝きが収まったかと思うと、水晶の中になにやら文字のようなものが浮かび上がった。
『はじめまして 水晶です』
…………。
水晶から水晶だと自己紹介された。そんなことわかってますよとしか言いようがない。
「わ、わ、水晶に文字が浮かんでます!」
「なにこれ……」
『わたしはカミヒト様の案内役です』
続けて言葉が浮かんだ。
「案内?」
『神の力の使用法をご指南したり、異世界や地球での活動のサポートをします』
……独り言に対して普通に返事が帰ってきたけど、AIでも搭載してるのかな?
『わたしは女神により遣わされた水晶です。人の創造物ではありません』
……心を読まれている気がする。もう一度確認してみようか。蓬莱天女さんの住む場所ってどこにあるんですか?
『ここより、徒歩20分ほどの場所にある小さな山の神社にあります』
読まれてますね心の中。さすが女神様から賜ったアイテムなだけはある。ふう、もう驚き疲れてしまったよ。
「こんにちは。私、妖怪とんでもない美少女の蓬莱天女と申します」
『こんにちは。水晶です』
「わあ、返事が返ってきました!」
「えーっと。その神社の詳しい場所は分かりますか?」
『はい。すぐにでもご案内可能です』
じゃあ、すぐにでも行ってみようか。とてつもなく怪しいけど、天女ちゃんの住居を早く確保しないといけないからな。
そうと決まれば、すぐに支度して行こう。そう思ったが問題があることに気がついた。
天女ちゃんの服装、すげえ目立つ。竜宮城の乙姫様みたいな格好だから、このまま外に出すことは出来ないだろう。ただでさえ、とんでもない美少女で目立つ彼女だから、こんな格好で行ったらどうなることやら。羽衣みたいな布も付いてるし。
「水晶さん。そこって、駐車場ってあるんですか?」
『あります』
じゃあ、車で行くか。ここは閑静な住宅街の中の端っこの方だ。玄関から道路までなら、隙きを見ていけば、誰にも見られずに車に乗ることは可能だろう。僕はスマホを取り出し、アプリを起動した。カーシェアリングの車が空いているといいんだけど。うまいこと車が空いていたので、すぐに予約して取りに行った。
天女ちゃんは無事、誰にも見られることなく車に乗せることが出来た。件の神社までのナビゲートは水晶さんにやってもらった。水晶さんの中に浮かぶ文字を助手席の天女ちゃんに読み上げてもらっていたのだが、初めての車に興奮して、指示を間違えて別のルートに入ってしまうちょっとしたアクシデントがあった。
まあ、そんな事があったので、神社までは10分ほどかかった。駐車場は自動車五台位は止められそうで、小さい山のてっぺんなので、周りは枯れ木に囲まれている。目の前には立派な白い鳥居があり、かたわらの石柱にはこう書いてあった。
――
『ここがカミヒトさまの神社です』
「へ?僕の神社?」
どういうことだ。ここは元からあった神社ではないのか。
『女神様が用意してくれました。カミヒト様はこの神社の祭神です』
祭神って……。確かに神様なら神社の祭神の方が自然だけれど……。
「そういえば、カミヒトさん、神様になったんですよね!なにかすごい力使えるんですか?」
「いや、これといって変化はないけど」
『まずは神社に入りましょう。カミヒトさまのお力については後で説明します』
どうやら僕にはすでに何かしらの力があるらしい。さあ、どんな力なんだろう。ちょっと楽しみだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます