第49話 刷り込み

 学生時代、わたしは暇さえあればゲームに没頭していた。

 当時はスマホなんて無かったので、もちろんテレビゲーム。

 自分の部屋にテレビが無いわたしは、リビングのテレビでゲームをしまくっていた。


 当然、リビングには母がいる。

 母はわたしが小さい頃から、


「ゲームばっかりするんじゃありません!」


 と言った事は一度も無いように思う。

 やるべき事(例えば宿題とか)さえきちんとやっていれば、何の文句も言わなかった。


 ある時。

 母が料理をしながら鼻歌を歌っていた。

 その時わたしは、ゲームはしていなかった。

 だけど、その母の鼻歌は明らかに……


「ねぇそれ、●●ゲームの曲だよね?」

「え? なにそれ?」


 毎日のように、わたしのゲームの音楽を聴かされていた母は、すっかりゲームの曲を覚えてしまっていたらしい。

 それも、無意識の内に。


「いい曲よね、これ」

「だからそれ、●●ゲームの曲」

「それは知らないけど」


 ゲームに興味は無くても、いい曲はいい曲だと感じるその感性が、わたしは好きだ。

 ……あ。

 母はゲームに興味が無い訳ではなかった、そう言えば(笑)

 それはまた、次回……

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