第38話 キムチチゲ

 大分前、まだ祖父母も健在の頃。

 家族みんなで焼肉屋さんに行った。

 そこで、父の弟(わたしから見たら叔父)が、メニューを指さして母にコッソリとこんな事を聞いた。


「お義姉さん、これなんでしょうね?キム チチゲ って」


 母は最初、叔父が何を言っているのか分からなかったようだ。

 もちろん、メニューには『キムチチゲ』と書かれている。


 何故、そこで切る!?


 そして意味が分かった母が吹き出し、みんなに向けて大声で言った。


「ねぇねぇ聞いてよ!●●ちゃん(←叔父)ったら、キムチチゲを『キム チチゲ』だって!」


 一瞬の間のあと。

 みんな一斉に吹き出した。叔父ひとりを除いて。


 当時まだ、『チゲ』という言葉が今ほど浸透していなかったのは分かるけれども、なぜ『キムチ』で切らなかったのかな。

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