第14話

ある日、"影の遺跡"という場所を目指した。その遺跡は古代の魔法文明が残したもので、その存在はまだ謎に包まれていた。蒼汰は遺跡の秘密を解き明かすことで、現代の問題解決に役立つ知識を得ることを期待していた。一方、アリアーナは自然と歴史が交錯する場所で、その力と知恵を深めることを期待していた。

長い準備期間を経て、影の遺跡への探索を開始した。二人は、遺跡の中を慎重に探索した。深い洞窟、古代の図像、壮大な遺構が混ざり合った迷宮を進んでいった。

探索の2日目、遺跡の奥深くにある広大な…広大な部屋に到着した。部屋の中央には大きな円形の台座があり、その上には透明な結晶が置かれていた。それはエーテルウェーブ・クリスタルと呼ばれるもので、古代魔法文明が残した魔法エネルギーを溜め込んだものだと理解した。蒼汰は古代の文献でこれについて読んだことがあり、その効果を知っていた。

エーテルウェーブ・クリスタルは、魔法エネルギーを吸収し、そのエネルギーを別の形で放出することができる。これを利用すれば、魔法の研究や実用的な利用が可能となるだろう。だが、その使用方法は専門的な知識と技術を必要とし、また安易に使うと危険を伴う可能性もあった。

蒼汰はこのクリスタルを慎重に持ち上げ、しっかりと保管するための袋に入れた。アリアーナもその重要性を理解しており、黙って彼を見守っていた。


蒼汰は遺跡から見つけたエーテルウェーブ・クリスタルを手にとり、それを眺めながら考えていた。彼の頭の中では、図書館で見つけたある図面が浮かんでいた。それはエーテルウェーブ・ブロードキャストデバイスの設計図だ。彼の能力、"知識の吸収"のおかげで、それらの図面を完全に理解し、記憶していた。

彼は町の中心地にある、一見すると何でも屋のような店に足を運んだ。その店の名前は「フェリックスの奇跡工房」。店主のフェリックスは年老いたが、眼光は鋭く、手は握ると固くて強い。彼はかつては大冒険家で、今では町の職人として働いていた。彼の作った道具は、何がしかの冒険に使うことができる優れものばかりだ。

蒼汰はフェリックスに自分のアイデアとエーテルウェーブ・クリスタルを示し、エーテルウェーブ・ブロードキャストデバイスを作ってもらうことを頼んだ。フェリックスは初めて聞くこのデバイスのアイデアに少し驚いていたが、その目は期待に満ちていた。彼は自分の工房に戻り、作業を始めた。


蒼汰がフェリックスの店を訪れると、フェリックスは微笑んで彼を迎えた。

「若者よ、何か新しい冒険の計画でもあるのか?」フェリックスが尋ねた。

蒼汰は自信たっぷりに微笑んだ。

「今回は情報の冒険だ。エーテルウェーブ・クリスタルを利用して、遺跡の情報を全世界に発信したいんだ。もしかしたら、誰かがそれに反応して何か新しい情報をくれるかもしれないからさ。」

フェリックスの目は輝き、彼の顔に興奮の色が広がった。

「それは実に素晴らしい考えだ、蒼汰君。君ならやり遂げることができるだろう。私も全力で協力するよ。」

蒼汰の目には意気込みと冒険への楽しみが満ちていた。これは新たな冒険の始まりだった。


月岡蒼汰は手にしたエーテルウェーブ・クリスタルを見つめていた。それは透明な基盤に無数の微細な線が交差し、中央には深い青色の石が埋め込まれていた。見るからに不思議な存在感を放つその装置は、手に取った瞬間から蒼汰の胸に高まる期待と緊張を増幅させていた。

彼の隣にはアリアーナが静かに立っていた。彼女の瞳も同様にクリスタルに注がれていて、その眼差しには祈りのような、そして同時に少しの不安が混ざっていた。

「準備はいいか、アリアーナ?」彼は心を落ち着かせるように深く息を吸い込みながら、彼女に問いかけた。

アリアーナはゆっくりと頷き、きらめく瞳で蒼汰を見つめて答えた。「はい、蒼汰さん。私はあなたと一緒にいます。」

そう確認すると、蒼汰はエーテルウェーブ・クリスタルを前に出し、指先で青色の石をなぞった。すると、クリスタルからは微かな光が発生し、まるで生命体のように微細な線路が動き出した。その瞬間、彼が調査した遺跡の情報がクリスタルに流れ込んだ。

そして次の瞬間、クリスタルは柔らかい光を全身に放ち始めた。その輝きはますます強くなり、やがて手元を離れ、空中に浮かび上がった。石の中からは深い青色の光が放射され、その光は空へと広がり、遠く遠くまで遺跡の情報を運んでいった。その光景を二人はただ見守ることしかできなかった。


蒼汰は、手にしたエーテルウェーブ・クリスタルを使って、ネバルミアの迷宮についての新たな発見を全世界に発信した。その情報は古代文明の遺跡についての複雑な解析データや未解読の魔法符号、そして彼が直接遭遇した怪物たちの詳細な情報まで含まれていた。

クリスタルは深い青色の光を放ち、その光は空へと広がり、遠く遠くまで彼の発見を運んでいった。それを見上げる蒼汰の心には期待と緊張が交錯し、誰かがその情報を受け取り、返信を寄せてくれることを強く願う気持ちが溢れていた。

そんな彼の願いは、早くも叶うことになった。


突然、エーテルウェーブ・クリスタルが再び輝きを増し、彼の手に温かな振動を伝えた。そして、クリスタルの中央部には文字が浮かんできた。

それは、エルデリア古代魔法研究院の学院長、エドワード・ラトリッジからのメッセージだった。

「月岡蒼汰殿、

あなたの発見に大いに感銘を受けました。ネバルミアの迷宮に関するあなたの詳細な報告は、我々の知識を大いに拡大しました。特に、魔法符号についての情報は価値があります。それはおそらく、古代文明が滅びた理由につながる可能性があります。

迷宮に潜む未知の危険に立ち向かい、その秘密を解き明かすあなたの勇気と献身に、我々は感謝の意を表します。

エドワード・ラトリッジ

エルデリア古代魔法研究院 学院長」

蒼汰はそのメッセージを読み終えると、深く息を吸い込んだ。そして、アリアーナに向けて光るクリスタルを見せ、笑顔を浮かべた。「見て、アリアーナ。我々の努力が認められたんだ。」


時は経つにつれ、エーテルウェーブ・クリスタルからのメッセージは次から次へと蒼汰のもとへと届けられていた。知識の波は、全世界を巡り、遠く離れた土地の専門家たちから集められた情報を運んできた。それらは、未知の古代文明についての独特な視点や解釈を含んでおり、蒼汰の知識を一層深めていった。

彼の前に広がっていたのは、あらゆる種類のデータと洞察で溢れた情報の海だった。古代の都市エクサリアの地図、ミルナクロスの太古の神殿の詳細な設計図、ブルータリアの謎めいた遺跡の写真... これらの情報のひとつひとつが、蒼汰の手元で生まれ変わり、新たな理解へとつながるキーパートとなった。

メッセージは時代や地域を超え、蒼汰の手元に届けられた。エクサリアの古代都市の詳細な地図は、それがかつてどのような役割を果たしていたのか、ミルナクロスの神殿の設計図は、それが何のために建てられ、どのような儀式が行われていたのか、ブルータリアの遺跡の写真は、その古代の建築物がいかに見事に保存されているかを示していた。

蒼汰はこれらの情報を一つずつ丁寧に解釈し、繋げていった。それぞれの知識の断片が、彼の手中で全く新たな形を取り、より深い理解へと結実していった。これは、ただの知識の共有だけでなく、広大な世界と繋がる一種のリンクであり、それぞれの知識の断片は蒼汰の視野を広げ、彼を更なる学びへと導いていった。


蒼汰とアリアーナは、鍛冶屋のドワーフ族、ギルバート・ブロンズビアードを訪れた。彼の頑固そうな顔には、待ち望んでいた完成品を見せるための満足感があふれていた。長い時間をかけて、彼は蒼汰のために特別な銃を作り上げていた。

二人が店に入ると、暖かな炉の火と鉄の匂いが彼らを迎えた。そしてその中心部、大きな作業台の上に新たな生まれたばかりの銃がそこに置かれていた。

「これだ、蒼汰。君のために作った、星光だ。」とギルバートは言った。

星光は、堅牢さとシンプルさを兼ね備えた銃だった。銃身は長く、弾の威力を最大限に引き出す設計だった。グリップ部分は手に馴染むよう作られていて、全体的に頑丈そうな黒いメタルで覆われていた。

蒼汰は、ギルバートから星光を受け取り、しっかりと握った。「ギルバート、ありがとう。これがあれば、これからの戦いに自信が持てる。」

ギルバートは笑顔で頷いた。「それが俺の仕事の目指すところだ。さあ、試し撃ちに行くぞ。」

蒼汰は新たに手に入れた星光を構え、アリアーナとギルバートと一緒に、銃の試射をするために森へと向かった。


蒼汰は星光を構え、森の中に響き渡るトーラスの荒々しい鳴き声に対峙した。その力強い姿はいかにも手強そうだったが、これが星光の威力を試す最適な相手だった。銃弾は爆音とともに飛び出し、その威力はすさまじかった。しかし、大きく動くトーラスに対し、最初の数発はなかなか命中しなかった。

アリアーナは蒼汰の横で、魔法の杖を握りしめていた。彼女の目は緊張しつつも、銃の威力とその使い方について学ぼうという意志に満ちていた。一方、ギルバートは落ち着いて観察し、たまにアドバイスを投げかけていた。「息を吸って、ゆっくりと標的を見据えるんじゃ。焦らんことだ。」

蒼汰はアドバイスを頭に入れ、再び銃を構える。彼の視線はトーラスの動きに焦点を合わせ、深呼吸をする。そしてゆっくりと息を吐きながら、引き金を引いた。銃弾がトーラスの大きな体に命中すると、爆音とともに強烈な衝撃が走った。

「なかなかやるじゃないか、蒼汰。」ギルバートは満足げに言った。


一日が過ぎ、森の奥深くで蒼汰は新たな力を手に入れていた。星光を使いこなす彼の姿を見て、アリアーナとギルバートは驚愕していた。この世界に銃は存在しない。それは新たな戦闘スタイルを切り開く道具であり、彼らの想像を超える可能性を秘めていた。


蒼汰の最初の技、"魔弾放出"は魔力を星光に込めて放つ弾丸だった。この弾丸は通常のものよりも強力で、様々な属性の魔法効果を持つことができる。木々を薙ぎ倒し、岩を粉砕する力を持っていた。

次に彼が放ったのは"星光閃"だった。星光を最大限に充電し、一瞬で大量の魔力を解放することで、光の爆発を引き起こした。瞬く間に広がる光は眩しく、その威力は圧倒的だった。しかし、使用後は一時的に魔力を使えなくなるというデメリットもあった。

この新たな力は、蒼汰がこれまでに積み上げてきた魔力の知識と、彼自身の創造性が生み出したものだった。新たな戦闘スタイルの誕生は、アリアーナとギルバートに驚きをもたらすとともに、彼らの冒険に新たな希望を灯した。


蒼汰の魔力は決して大きいとは言えなかった。しかし、その魔力を繊細にあやつる力は彼が特異に優れている部分であり、それが星光という新たな武器と絶妙にマッチしていた。"魔弾放出"と"星光閃"は、蒼汰の魔力を星光の弾丸や光に変換する。それは彼が魔力を精密にコントロールし、流すことで可能になる。精巧に魔力を操り、銃の力を最大限に引き出す。他の人が簡単に真似できるものではなかった。

星光は蒼汰の手により、ただの物理的な力だけでなく、魔法の力をも内包した武器となった。そしてその力は、蒼汰自身の力や技巧と融合し、一つの新しい力として具現化していた。


戦いが終わると、アリアーナとギルバートは蒼汰に近づいてきた。アリアーナは優しく微笑みながら蒼汰を見上げ、「信じられない…。蒼汰さん、あなたはまるで新たな魔法を創り出したかのようよ。魔力の使い方、それに星光の扱い方…。私たちの知っている戦闘法からは想像もつかない。」と言った。

一方、ギルバートは大きく拍手を打ち、「ハハ、よくやった蒼汰。想像以上じゃ。星光がそんなにも輝くとは思わなかったよ。あの銃を作ったのは俺だが、あんな風に使うとは思わなかった。その力、扱うのはお前しかいない。」と笑いながら言った。


蒼汰は彼らの言葉を受け、自分の新しい力に自信を持つことができた。しかし、これからはもっと鍛えていく必要があると思い、更なる強さを追求する決意を新たにした。


3か月間レムニアに滞在してきた蒼汰は、新たな目標地点を見つけた。ブルータリアの遺跡だ。エーテルウェーブ・クリスタルを介して届いた情報から興味をそそられ、彼はその古代遺跡への探訪を決意した。謎に満ちた古代の記号、複雑に絡み合った建築構造、そして中央に据えられた巨大な円形広場には、古代から現在もなお機能しているとされる装置があるという。それらは全て、3000年前の古代文明、ブルータリアの証とされていた。


「アリアーナ、俺、ブルータリアの遺跡を見てみたいんだ。」蒼汰は彼女にそう告げた。リスクを覚悟でアリアーナの知り合いが出没する可能性のあるレムニアにとどまるより、新たな旅路に出ることに決めたのだ。彼らはレムニアを発ち、次の目的地へ向かうことにした。


ブルータリアの遺跡があるヴィタリスは大陸の南東部に位置しており、湿地帯の中心部に広がる謎多き遺跡地帯だ。その遺跡は豊かな湿地の中に存在し、古代の人々が自然と宇宙を熟知していたことを示唆していた。彼らの記号は星座や天体の動きを描いており、中央の装置はかつて天文台としての役割を果たしていたとされている。

「あたしたちも一緒に行くわよ、蒼汰。」リリィが言った。その目は堂々とした決意で輝いていた。

「それはありがたいけど、危険だよ。」蒼汰は応じた。「ブルータリアの遺跡は未知のものがいっぱいだ。」

リリィは微笑んだ。「だからこそ、あたし達がついて行くのよ。仲間でしょ?」

ギルバートも頷き、一歩前に出てきた。「リリィの言う通りじゃ。俺たちは戦いの経験がある。君たちを守れる自信があるんじゃ。」


しかし蒼汰は首を振った。「それでも、今回はダメだ。あなたたちは無理に巻き込まれる必要はない。」

リリィとギルバートは一瞬言葉を失った。しかしリリィはすぐに立ち直り、「でも、あたしたちは……」と言おうとしたが、蒼汰は手を上げて彼女を止めた。

「ありがとう、リリィ。ギルバート。でも、これは僕とアリアーナの戦いだ。何かあったらすぐに連絡するから、それまでは待っててくれ。」

リリィは一瞬考え込み、それから小さく頷いた。「わかったわ。でも、何かあったらすぐに連絡してね。待ってるから。」

ギルバートも頷いた。「無理せんといてな。お前たちの戦いが終わったら、また一緒に旅をするぞ。」

蒼汰は深く頷いて、「ありがとう。それまで、お元気で。」と言った。そして、アリアーナと共にレムニアを後にした。


蒼汰とアリアーナはレムニアからフェイズゲートのある町、テラクロスへ向けて旅立つことに決めた。テラクロスまでの距離は、徒歩であればおよそ4日間かかる。しかし、その苦労も報われるだろう。なぜなら、テラクロスからはブルータリアの近くにあるアスペリオンへと、瞬時に移動することができるからだ。

フェイズゲートは、この世界の先端技術を体現したものであり、場所と場所の間を瞬間移動することが可能とする驚くべき装置である。その稼働の鍵となるのは、フェーズクリスタル。これは古代の遺跡からごく稀に発見される貴重な結晶体で、その名の通り、物理的な空間を「フェーズ」させ、遠く離れた場所との間に接続するゲートを形成することができる。

フェイズゲートは限られた数しか存在しない。それらは主に大きな都市や要所に設置され、公的な規制や料金が適用されている。しかし、それにも関わらず、その利便性と速度は、長距離の移動を必要とする旅人や商人、冒険者にとっては必須の存在となっている。今回の蒼汰の旅も、フェイズゲートの存在があってこそ可能なのだ。

蒼汰はすぐに旅立つ準備を整え、長旅に必要な荷物をパックに詰め込んだ。アリアーナと一緒にテラクロスへと向かうのだ。そこからは、彼の目指すブルータリアの遺跡が近いアスペリオンへ、フェイズゲートを通じて瞬く間に移動する予定だ。それぞれの目的地へと向かう一歩一歩が、新たな冒険への扉を開く。

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