第3章 採取課題は波乱の幕開け
第26話 学生の本分はお勉強です!
さて、私が通っている"魔法学園"はその名の通り魔法を学ぶ為の学園であるが、魔法と一口に言ってもその種類は多岐にわたっている。
また、その魔法を習得するための前提として修めておくべき知識や技術がある場合も少なくない為、そうした基礎科目のようなものも存在していた。
そしてその中の一つに『薬草学』と言うものがある。薬草に分類される植物もまた無数に存在するが、そのなかでも魔力の元となる"マナ"を回復させるものであったり、一時的に身体能力や魔力を強化するようなものを使用して作られたポーションは、魔法使いにとっても重宝するものである。
マナが尽きるような不測の事態に陥った際、そうした薬草の知識や取り扱いを知っておくことは生命線となりうる重要なことなのだと言う。
そんな訳で、私はこの日、その大事な薬草学の課題として出された"薬草の採取"をするために、薬草学の先生に指定された森へと訪れていた。
ゲームの時には特別なイベントシーン以外では授業の描写なんてサラッと流されている部分だったし、こうして実際に抗議を受けたり課題をこなしたりするようになると、その大変さをしみじみと実感する。
ヴィオリーチェを追い越して学園No.1の魔法使いになるぞ!なんて簡単に豪語してしまったけれど、やっぱりそれは生半可な努力では達成できない大きな目標なんだなと改めて自覚したりもした。…けど、私がヴィオリーチェを追い越せない=彼女の死亡フラグが存在し続ける…となる以上、私が努力を止める理由はない。
だからこそ、ヴィオリーチェに放課後の魔法のレッスンを付けて貰うことだけでなく、普段の授業やテストも頑張らないといけないし、最近はクラウス先輩にもビシビシしごかれているのだ…!
…という訳で、そんな風に日々頑張っている私が、今やってきているのは学園の敷地からは離れた場所にある広大な森だ。ここも学園が所有している土地であり、部外者は進入禁止となっているらしい。
要するに、授業や課題で使うための森…と言うことであり、そんなもの所有してるの!?と学園の資産の多さにびっくりしてしまう…。
「…アルカ!何ブツブツ言ってるの?疲れちゃった?休憩にしてお弁当食べる?」
あれこれと思いに耽りながら歩いていた私の少し前で立ち止まり、振り返ってこんな風に心配してくれているのはルートメイトで親友のリリーだ。
彼女は同級生でクラスメイトでもあるので当然同じ講義を受けていたし、今回の採取課題も一人で行くより一緒に協力して探そう!と言うことになり、一緒に森へやってきたのだった。
「へーき、へーき。えっと、それで…採取するのはマンドラゴラ…だったよね。あの引き抜くと物凄い叫び声をあげて、その叫びを聞いた人は死ぬ…みたいな」
「さすがに死ぬことはないって。発狂するんだって」
「ある意味死ぬより悲惨では?」
「でもちゃんと対策も予習してきたでしょ?」
「そりゃあ、課題の評価も良いのを狙ってるからね!ほら、耳栓!」
何せ目指すは学園のNo.1なのだ。
気合を入れて、用意してきた耳栓をぴしっと掲げて見せると、リリーはちょっと意地悪く笑って、まるで先生みたいな調子で質問してきた。
「はい。それじゃあ、引き抜いた後はどうする?」
「闇のマナを溶け込ませた水を桶いっぱいに満たして、それにマンドラゴラを一晩浸して仮死状態にしてから持ち帰る…だったよね」
当然私だってちゃんと勉強してきた。授業で先生が大事だと言っていたことを思い出しつつ答える。
「正解!じゃあ、後は実演だね…!…とは言え、マンドラゴラを見つけるとこからになるんだけど…」
「何とか夜になる前に見つけたいね…!」
採取した後の処理に『桶に満たした水に一晩浸す』という手順がある以上、スムーズ発見して採取出来たとしても一晩は野営することになる。(水でひたひたの桶を抱えて移動するのはさすがに難しいので…)
ゲームではこんな授業イベントはなかったから、こんなことまでするんだ…!と私は結構驚いた。でも、ゲームでは味わえなかったマップやイベントを味わえてると思うとちょっと楽しかったりもして…。
ただ惜しむらくはヴィオリーチェと一緒に来られなかったことだ。さすがに彼女は1年先輩だし、仕方ないのはわかっているのだけど、この課題が終わるまでは個人レッスンもお預けなので、正直……正直寂しい!!!!!!
あの遊園地の一件以来、私はヴィオリーチェに握って貰った手の感触と、夕陽に染まったヴィオリーチェの恥じらうような横顔を思い出しては、昂るような思いで身悶えるという日々を送っていた。
心なしかヴィオリーチェの態度も、以前より少し距離が近づいたような…そうでもないような…でも、やっぱりちょっとは近づいたような気がする…!という感じだった。
だから毎日の放課後の逢瀬を早く再開させたいと言うのも、この課題をさっさと終わりにしたいという理由の一つでもあった。
さっさとしっかり課題を終わらせて、ヴィオリーチェに褒めて貰うぞ!!
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